５９幸せの中 ページ9
｢ほら、もう大丈夫だって｣
少しのざわめきと、聞き覚えのある声でAは目を覚ました。視界に映ったのは複数の刀剣男士たち。一瞬身構えたが、すぐに力を抜いた。どこか現実味が無かったからだ。
輪郭がぼやけるような白んでいるような感じで、Aが今見ているものは曖昧だった。夢の中にいるような、ふわふわした感じ。
｢うぅ……ありがとうございます｣
鼻声混じりの声の主は五虎退だ。怪我をしているようで、傷のある右腕にアホ毛の目立つ彼が包帯を巻いていた。
｢鯰尾……藤四郎｣
思わず口に出てしまい、慌てて口を両手で覆う。しかし彼らがこちらに気づく様子はない。ふと自分の身体を見ると、向こう側の景色が薄ら見え透けていることに気づいた。
再び彼らに目を向ける。その場に居たのは粟田口派の何振かで、自分がこの本丸に来る時より傷が少ないように見えた。その場には骨喰もいた。
ふと自分がこの不思議な場所に来る前を思い出す。確か堕ちかけた鯰尾を修復するため、彼の手を握り名前を呼んだところから記憶がない。まるで鯰尾に吸い込まれるみたいに意識が途絶えたのだ。
ならばここは鯰尾の中だろうか。鯰尾の記憶の中。骨喰もいるということは、初期の審神者の本丸だろう。
Aは少しずつ彼らの方へと近づく。手が届きそうな距離まで近づいたが、やはり彼らがこちらを見ることはなかった。
｢よし。手当もしたことだし、何かして遊ぼうか｣
鯰尾の提案に皆が待ってましたとばかりに嬉々として食いついた。
彼らの身体にある傷を除けば、劣悪な環境にいる刀剣男士だとはわからないくらい彼らは幸せそうに笑っていた。
これは鯰尾の幸せな記憶だと気付き始めた頃、Aの視界がぼやけて目の前にいた鯰尾らが姿を消した。何事かと辺りを見渡すが本丸の景色が変わった様子はなく、彼らだけが消えてしまった。
とりあえず本丸の廊下を歩いていく。自分はここにはいないのに、床を踏みしめる感触はリアルだった。少し湿り気を持った冷たい床、肌に纏わり付く湿った空気。気づけば雨が降っていた。
｢ごめんなさい……ごめんなさい……｣
ある一室から、激しい罵詈雑言と謝罪の言葉を紡ぐ声が聞こえた。何をそんなに怒鳴っているのだろうかとAはその部屋の前で立ち止まる。
記憶が正しければ、そこはAが部屋として使う筈だった場所だった。
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アニメラブ(プロフ) - 小夜！！！！ 帰ってきてー (2017年9月22日 9時) (
レス) id: a0166d0c90 (このIDを非表示/違反報告)
和(プロフ) - 華骸さん» ありがとうございますヽ(*´∀｀)ノ (2016年8月2日 18時) (レス) id: 92460ae46a (このIDを非表示/違反報告)
華骸(プロフ) - 和さん» 罪人の首を刎ねよの方も見てくださってありがとうございます！ 励まされたなんて私はそんな大層なことは書いてないですよ(笑)本当の事を書いただけです！ これからも読みに来ます(。・ω・。)ゞ (2016年8月1日 22時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
和(プロフ) - 華骸さん» わっわっ、コメントありがとうございます(*^^*)前回の華骸さんのコメントにもすごく励まされ、続編まで……！華骸さんの"罪人の首を〜"のお話毎回楽しみにしております(^-^)続編もおめでとうございます！ (2016年8月1日 8時) (レス) id: 92460ae46a (このIDを非表示/違反報告)
華骸(プロフ) - 続編おめでとうございます！ 楽しみにしていました！ これからどういう展開になっていくのが読めない感じがいいですね！ ワクワクします！ 更新楽しみにしてますね(*´ω｀*) (2016年8月1日 1時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和 | 作成日時：2016年8月1日 0時
