６１救いとは ページ21
鍛刀部屋まで鯰尾を運び、小さな刀匠に彼を託した。言葉の意味をしっかり理解しているのかはわからないが、Aの説明に対して刀匠は頷いていた。
「傍に、いてもいいか」
骨喰は震えた声で呟く。
「私も……います」
Aはそう言って、音もなく涙を流す骨喰の手に自分の手を重ねた。
一期も部屋の隅で立ったまま、出ていくつもりはないらしい。
「お願いします」
Aがそう言うと、刀匠は無言で頷き刀解するための道具を手に、鯰尾に手をかけた。
＊
人の死を見届けたこともないのに、刀の死を見届けるというのはなんとも不思議なものだった。刀匠が鯰尾を刀に戻し、少しずつ溶かして、最後に残ったのは骨ではなく、資材。骨喰の願いにより、それは荒れた庭にある一番大きな木の根本に埋められた。
「……骨喰さん」
木の側を離れない彼の横に、Aは立つ。彼は腫れた目でAを見て、また木に視線を戻した。
唯一無二の兄弟を失った彼の悲しみは計り知れない。きっと鯰尾が骨喰を失った時もそれ程の悲しみを背負ったのだろう。そして、Aも。
「鯰尾……さんは、貴方に謝りたいと言っていました」
「……兄弟と話したのか？」
「少しだけ。彼は自分がしたことに後悔しながらも、本当は生きたいと強く願っていた」
骨喰は何も言わなかった。Aの一言一句聞き逃さないように耳を傾けているのだ。
「だけどその願い自体が皆を傷つけるかもしれないということを酷く恐れてもいて……刀解してくれと」
「……そうか」
でも、とAは続ける。
「私がしたことは、本当に正しかったんでしょうか……私より力の強い審神者なら、彼を助けることが出来たかもしれない」
結局何もできなかった。鯰尾一人を助けられなくて、ここにいる刀剣たちをどう救おうというのだろう。
しかし骨喰は「それは違う」と言ってAを見た。
「兄弟にとって、刀解されることが唯一の救いだった。きっとあいつもわかっていた筈だ」
─俺はもう手遅れですから。
ふと鯰尾の言葉を思い出す。確かに彼は自分がもうダメだと悟っていた。その上で、刀解してくれと頼んできた。
「……重荷を背負わせてしまった。すまない……」
震えた、泣きそうな声だった。
助けられなくても、助けたかった。また昔のように笑い合いたかった。そんな言葉が聞こえてくるようで、Aは唇を噛む。
─私には誰も救えないのだろうか。
記憶の中の小夜が泣いている気がした。
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アニメラブ(プロフ) - 小夜！！！！ 帰ってきてー (2017年9月22日 9時) (
レス) id: a0166d0c90 (このIDを非表示/違反報告)
和(プロフ) - 華骸さん» ありがとうございますヽ(*´∀｀)ノ (2016年8月2日 18時) (レス) id: 92460ae46a (このIDを非表示/違反報告)
華骸(プロフ) - 和さん» 罪人の首を刎ねよの方も見てくださってありがとうございます！ 励まされたなんて私はそんな大層なことは書いてないですよ(笑)本当の事を書いただけです！ これからも読みに来ます(。・ω・。)ゞ (2016年8月1日 22時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
和(プロフ) - 華骸さん» わっわっ、コメントありがとうございます(*^^*)前回の華骸さんのコメントにもすごく励まされ、続編まで……！華骸さんの"罪人の首を〜"のお話毎回楽しみにしております(^-^)続編もおめでとうございます！ (2016年8月1日 8時) (レス) id: 92460ae46a (このIDを非表示/違反報告)
華骸(プロフ) - 続編おめでとうございます！ 楽しみにしていました！ これからどういう展開になっていくのが読めない感じがいいですね！ ワクワクします！ 更新楽しみにしてますね(*´ω｀*) (2016年8月1日 1時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和 | 作成日時：2016年8月1日 0時
