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38話 ページ39

「ジェイドみたいに
いつも冷静で狡猾に生きられるの?
ジェイドのは媚びへつらった世渡りじゃないわ
世界の海を探しても、
あんなに出来る人魚に会ったことない!
いつもいつも好きな子に意地悪して、バカみたい!
あの子、隣の町の男の子と婚約したらしいよ?」

へら、といつもと同じ笑顔で、
彼女は
普段より数倍冷えた声音で相手を罵りました。

「フロイドみたいに自由に生きられるの?
ちゃらんぽらんだし適当だけど、
あなたよりずっとやれるやつよ。
あいつには自由に生きられる能力があるの。
あなたなんかとは違ってね。」

「可哀想、って
未だにママに囲われて
生きてるあなたの方が可哀想。
大人にって生きていけるの?
餌も自分で取れないし……
食物連鎖に巻き込まれておしまいね。」

「そうやって親のしいたレールを
なんにも考えずに歩いていきなさいよ。
描かないやつに、興味無いわ」

勝手に言ってろ雑魚。

今となればさすがに
女性の吐くセリフではないのでは、
と言いたいところですが、
あの時は随分と彼女が格好よく見えたものです。
それから、一分の迷いなく
我々の隣を選んだ姿に、
少し嬉しくもありました。

……今までフロイドと、
常に2人だった故に、
誰かが加わることに違和感はありましたが、
それ以上に彼女であればいいと、
そう思えるほどに。

その後僕たちは彼女をアズールに会わせました。

至極当然ですが
アズールは蛸壺の中に隠れていて、
彼女はそれを見て爆笑したものです。

しかし周りに散らばる紙やペンや、
そこに書かれた魔法陣、
薬剤の精製、組み合わせ……

「なんでそんなに頑張るんです?」

「僕を馬鹿にしたお気楽な人魚を、
見返してやるんだ」

「最高じゃないですか、やりましょう!
私も1枚噛ませて頂けます?」

ぶわ、と彼女の髪が紫に染った。

あまりに驚いてツボからでてきたアズールに、
なんだ、そんな顔なのね、
と彼女は笑って。

ちょうどその時太陽の光が海底に届いて、
彼女の髪の色と、笑顔と、
それはもう綺麗に重なったものです。

僕は、
あの時の記憶を一生忘れはしないでしょう。



……あぁ、フロイドが彼女をカジキちゃん
と呼ぶ理由ですか?

本人がわかっているのかはさておき、
あいつは意外に繊細な男です。

名前で呼べば
完全にこちら側に入れてしまいますからね。

フロイドのことです、
自分の感情に
折り合いもついていないんじゃないんでしょうか?

ふふ、そういう点ではアズールの方が上手ですね。

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作者名:よく骨を折る田中 | 作成日時:2020年6月30日 22時

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