32ー1(少年) ページ8
もう日は沈みきり、飲食店以外は閉店する店もでてくる。
昼間しか歩かなかったから気付かなかったけど、かぶき町って結構賑やかなんだね。
飲食店、というか大人の社交場?が多いからかな。
「ニャー」
『?!』
脚にすり寄る物体に驚いたけど、見下ろすと野良猫が一匹。
そういえば昔、拠点に猫一家が滞在してたときあったなぁ。
『どうしたー?』
「ニャウ」
『………ついてこいって?』
路地裏にひょいと入っていく猫。暗がりに猫の目がキラリと光る。
仕方ないと猫のあとをついていく。
どんどん奥へ、大通りから離れている。
次第にディープなラブホ街、さらにそこを抜けて安宿が多く集まる下町へ。
『お前っ、どこまで行くのさ。いい加減にしないと戻れなくなるっ』
「ニャー」
猫はボロい長屋の前で止まると戸をカリカリと引っ掻き出した。
『………え?ここ?え、住人でもなければ知らないとこだし、開けるわけにはいかないし』
もごもごしていると猫は戸に向かって大ジャンプをし、ドロップキック。
ボロい戸には十分な衝撃だった。
軋みながら戸は外れ、開いてしまった。
あ、開いてしまったのなら……覗くくらいはしてもいいかな?
灯りもなかったから空き家かも。
『!』
猫が向かった先にはぐったりと壁に背を預けている人影。
黒いマントに身を包み、フードをかぶっていて顔が見えないけど……。
「ニャー」
『あの……大丈夫?』
「っ!」
『ぅわっ』
咄嗟に屈んだ結果、頭上を白刃が通りすぎた。
『あっぶなっ!ちょっと!殺す気…!?』
「………女?」
『そりゃそうだけど』
声からして青年……いや、少年か。
なんでこんなところで刀持って潜んでるんだろう?
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作者名:都野桜 | 作成日時:2021年12月5日 11時