31ー2(買い物) ページ6
刀を買った私は次の目的地、呉服屋へ。
「いらっしゃいませ〜」
呉服屋………というものに来るのがほとんどない我が人生である。
松陽がいた頃には着物を買ってもらったような気もするが、ほとんどおさがり。
それでいいと思っていたから問題なかった。
一人になってからは貰い物だけで生きてきたから無論行かなかった。
さすがにあんな貰い物だけで生活するのはよくない。
もうやけくそになって生きる必要なんてないんだしね。
これからは真っ当に生きていく。たぶん。
とにかく、そう思ったからこそ普通の着物も欲しいなと思ったわけで。
店内を見回しても、女物の着物が見慣れていない。
似合うものなんてないのではと思う。
ぐぬぬと唸っていると、見かねたのであろう店員さんが声をかけてくれた。
「お客様、お悩みですか?肌が白いので優しい色合いがお似合いかと思いますよ。もちろん、好みがあればそちらでもいいのですが」
『あー……いや、好みないんで、ただせっかくなら似合うのがあったらいいなぁーと』
「それでしたらお任せください!お客様にぴったりなのを探すお手伝いをさせていただきます!」
自信満々な様子におずおずとしながらも、プロに任せた方がいいやと任せることにした。
これはどうですかとずらっと用意された着物。
優しい色合いばかりで、暗い色ばかり着ていた私には女の子らしくて眩しいっ。
少し悲しく感じながらも、本当に似合うものなのかと考えてしまう。
そりゃぁ女の子だし、可愛い着物を着たい気持ちはある。
だけど……。
「さぁさぁお客様!こちらを試着しましょう!たくさんありますからね!」
『えっ、あっ、はい!?』
てきぱきと手際よく着付けられていくのでされるがままであった。
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作者名:都野桜 | 作成日時:2021年12月5日 11時