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41ー2(河川敷の決闘) ページ32

『………強いなぁ』


彼が立ち上がるとすぐに刃が向かってきた。

刃に沿わせて後ろに流すと間合いを詰めてピタリと静止した。


私の刀は彼の首もとに添えられ、そして彼の刀も私の首もとへと刃先が向いていた。


『………世話になったとは思ってるよ。あんたたちには良くしてもらった。だから私は今も無事に生きてる。感謝してるんだよ』
「いつ気付いた?」
『近藤さんに会ってからね。ずっと生きるのに必死で、あんたの家で世話になってたときのこと、思い出さなかったからさ。遅くなってごめん、総悟』


近藤が一生懸命思い出させてくれたからね。


「本当に遅いでさぁ、お前。黙っていなくなったり忘れたり、薄情者だろぃ」
『悪かったって。必死で大変だったの、大目に見てよ』


お互い刀を納めると見物客が散っていく。


『思い出すよ、武州出る前に道場で一度だけ手合わせしたの。あの時も総悟に負けた』
「今回は引き分けだったけどな」
『手加減してたくせに』
「お前もな」


お互いにやりと笑い、土手を上がる。


「お前、そんな顔できたんだな。よく喋るようにもなったし」
『まぁね。あれからいろいろあった』


話せば長いし、話す必要もない。


「じゃ、俺は見廻りに戻りまさぁ。じゃあな」
『あ、うん。お疲れさま』


ひらひらと手を振る後ろ姿を見送り、今度こそ家路についた。


あんなに世話になっておきながら、ずっと忘れてたなんて……確かに薄情者かもしれない。

でも、あんたは………総悟たちはちゃんと覚えててくれたんだね。こんな私のことを。



……それにしても、ラーメンが胃から出てこなくてよかったー…。





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作者名:都野桜 | 作成日時:2021年12月5日 11時

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