40ー2(美味しい匂いに釣られて) ページ30
「いらっしゃい」
ハキハキとした女店主の声。
一人でやってるのかな。
まだ早い時間だからか、店内に客の姿はない。
『豚骨ラーメン、チャーシューとメンマ、二倍でお願いします』
「はいよっ」
店内に充満するラーメンの香りがたまらない。
『………ん?』
壁に掲示されているメニュー表を見ているとそばという文字が。
『あの………そばって、あのそばですか?』
「あぁ……ラーメン屋に来てそばを頼むバカがいてね。メニューに追加したんだよ」
『えぇ……なんて図々しい人なんだ;;』
我が道を行ってるんだろうな、その人。そば屋に行けよ。
湯切りされたラーメンがスープに入り、トッピングされていくのをじっと見ているうちに完成。
「はい、お待ち」
『ありがとう、いただきます』
待望のラーメン、いざ!
『っ!?』
縮れ麺に絡む濃厚な豚骨スープ、コクがあるかと思えばしつこすぎず、モチモチ歯応えもある麺とともに飲み込まれていく。レンゲを持ち直し、スープを口に運ぶ。
なんだこの旨味は……!?
「気に入ってくれて何よりだよ」
返事を忘れるくらい食べる手が止まらない。
今まで食べたラーメンの中でもトップクラスではないか?
江戸のラーメンってこんなにも美味しいのか……。宇宙で食べるのとは訳が違う。
トッピングも美味しかった。
チャーシューは柔らかくて口に入れた瞬間とろけるようにほぐれ、めんまは風味よし食感よし、煮卵は味付け抜群で黄身が半熟なのも最高だった。
『ごちそうさまでしたっ!』
ペロリと完食し、満腹になったことでほっこり満足。
今度銀兄たち連れて来ようかな。
そういえば神楽も神威みたいに大食いなのかな?
ははは、万事屋食費に困ってそう〜。
……………。
『また来ますね』
「それは嬉しいね。待ってるよ」
ラーメン屋のそばも気になるから、そのうち食べてみよっかな。
しかしそのそば好きの客、変わってるなぁ。
ヅラ兄も侍たるもの食事は質素になんたらかんたら言ってたけど、今でもそんなこと言うのかな。
あれから会ってないけど、元気にやってるかな〜。
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作者名:都野桜 | 作成日時:2021年12月5日 11時