39ー3(一億年早い) ページ28
屯所を出て行ったAの後ろ姿を見送り、ため息をついた。
「まったく、昔に比べて話すようになったかと思えば、突っ走りそうだな」
「言いたいことはわかるけど、女の子一人じゃ危ない。無茶するような出来事が起きなければいいんだがな……」
既に大きな無茶をされている俺たちとしては、何をしでかしてもおかしくないとばかりに不安に襲われる。
「しかし、強いのは確かだ。トシも覚えているだろう?リハビリ稽古」
「あぁ……彼奴と竹刀を交えたたった一度だけの稽古だったからな」
煙草を咥え、火をつけると煙とともに昔の記憶が浮かぶ。
Aが去る前日、俺や近藤さん、総悟はAと手合わせをした。
一勝一分け一敗。
総悟にいたっては、怪我の箇所を狙った大人げない勝負だった。
俺も手加減していたとはいえ、良い勝負だった。いつか本気で手合わせしたいぐらいの腕だ。そう思っていたが、この前のは油断していた俺が悪かったな。
なるほど、万事屋の妹だってんなら、あの強さに納得している自分がいる。
「そうだトシ、Aちゃんに隊士への剣術指導を頼むのはどうだ?臨時の師範として手合わせもしてくれたら武力向上にもなる」
「俺も考えていた。まぁ、仕事に支障が出ない範囲ならいいんじゃねぇか?」
「そうか!それなら明日にでも頼んでみる」
意気揚々としている近藤さんが戻っていった。
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作者名:都野桜 | 作成日時:2021年12月5日 11時