36ー3(捜査協力) ページ21
事件資料を見て思考を巡らせる。
攘夷党の狙いがわからないな。
狙われた幕臣たちは同じ派閥でもなければ特に敵対しているわけでもないし、全員の共通点があるわけでもない。
無差別襲撃とも考えられる。
幕臣であればなんでもいい、と。
「見ての通り、共通点がないから次に誰が狙われるかもわからない。気付いたことがあればなんでも言ってほしいけど、何かないかな?」
『近藤……さんは心当たりない?幕府内で聞く噂とか』
「ないからこうして聞いてるんだけど。攘夷側にも何か噂ないかな?」
『だから元だって言ってるでしょ』
何回言えばいいんだこれ。
「それにしてもAちゃんが万事屋の妹だったとはね」
『近藤さんたちも、あの人たちを知っていたとは思いませんでした。世間って案外狭いですね』
「宇宙にも行ける時代なのにな。また会えて嬉しいよ」
『はぁ、どうも……』
本当に世間って狭い。
資料に視線を戻し、状況を整理する。
現時点でわかっているだけでも8件の襲撃に関与している。
わかっていないものを含めるともっとあるだろう。
『攘夷党は自らを名乗っているわけではない。攘夷志士というより、暴れたいだけの暗殺集団ですね。目的もわからない攘夷党なんて……気持ち悪い』
「Aちゃんはなんの目的で攘夷を?」
『………』
なんで………か。
八つ当たりに近かったけど、攘夷狩りで捕まるお兄ちゃんたちが多かったし、少しでも助けられたらって。
あの時の幕府嫌いだったし……。
とにかく、ムカついてたから邪魔したかった。
……そうだよね、彼奴等も何か事情があって事件を起こしているはず。
いったい何を考えているんだ……?
そして奴はなんでよりにもよって悪鬼羅刹を名乗っている?
「やっぱり、悪鬼羅刹は幕府に強い恨みがあるのかな?」
『悪鬼羅刹…というより、悪鬼羅刹を名乗ってる男、ですね。奴があの悪鬼羅刹でないことはわかります』
「え、なんで?」
「その話、詳しく聞かせてもらおうか」
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作者名:都野桜 | 作成日時:2021年12月5日 11時