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34ー1(逃げの小太郎) ページ14

スパァンッと勢いよく障子窓を開いて中へと転がり込んだ。


音に気付いた住人が俺だとわかれば、咄嗟に持ってきたのであろう包丁と伸ばし棒を下ろした。


「なんだいこんな時間に。てっきり泥棒かなにかかと思ったよ」
「女一人がそのようなものを持って駆けつけるものではないぞ、幾松殿。もし泥棒や暗殺者、ブラックサンタやジェイソンだったりでもしたらどうする?危険人物を前に心許ない武器を持っていては逆に狙われて危険だ」
「暗殺者に狙われる覚えはないしブラックサンタやジェイソンがうちに来るわけないだろう?というか攘夷志士は危険人物に入らないのかい」
「俺は心優しい穏健派だ。腐っている国に刃を向けど、一般市民に危害を加えるつもりはない。美味い蕎麦を作ってくれるなら尚更だ」
「うちはラーメン屋なんだけどね。見つからないうちにさっさと出ていきなよ」


仕込みの時間だったのだろう。
厨房へと戻っていく背中を見送り、窓から外を覗き込む。


追手がいる様子はないな。


窓を閉め、壁に背中を預けて座り込んだ。




事が起きたのは数十分前。

元はといえば、俺が幕吏の隙を知るために潜入していたところから遡る。

市原エヅラ子として掃除洗濯、家事をこなし、相手の懐事情だけでなく下着事情や通ってるSM倶楽部事情まで知ったところだった。

屋敷に乗り込んできたのは過激派攘夷党。


全身を黒マントで覆い隠し、屋敷内の人間を容赦なく襲撃した。


俺は物干し竿や洗濯物で攻撃を阻み、その場を逃げるので手一杯だった。


さすがに手ぶらで潜入するのは間違いだったか。
次からはんまい棒を持参しよう。



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作者名:都野桜 | 作成日時:2021年12月5日 11時

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