最強チャンピオンの苦悩２ (ページ6)

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謝罪と感謝は一文字違いページ6

「だってジムチャレンジャーがここで受付してるのバレたらよくないし……」

「そりゃーそうだわな。

……ま、"俺"はすぐに気づいたけどな」

私の身体がふんわりと温もりに包まれた。
すぐにキバナさんに抱きしめられているということを理解する。

いつもは自分のことを"俺様"という彼は、なぜか今は"俺"と言っていることも気になるが、それよりもこの何もない無言の時間が心地よかった。

この包まれているような温かさも、鼻をかすめる柑橘系の香りも、私の背中にある大きな手のひらも、どれも私が求めていたものだった。

私の目からは自然と涙が零れる。

「……、たくさん泣けよ。
今は俺しか見てねーし、ずっとこうしてやりたかった」

「うっ、ご、ごめん、キバナさん……」

「謝るんじゃねーよ。
悪いのは俺の方だ……。守るって言ったのに、守ってやれなくてすまなかった」

「そんなこと……な、い……」

私はしばらくの間、キバナさんの腕の中で泣き続ける。
キバナさんは私を落ち着かせるため一定のリズムで背中をさすってくれていた……。

―――――――

「落ち着いたか？」

「うん」

キバナさんが話し出したときには、すでに私の涙は枯れていた。
私はそっとキバナさんから離れる。

「な、なぁ……、いつもその恰好で受付してたのか？」

「え？うん、そうだけど？変かな？」

「変じゃねーけど、これを着ろ」

そう言ってキバナさんは私に自分のパーカーをすっぽりと被せた。

変じゃなかったら、パーカーなんて着せないよね……？

「いつナックルシティに戻ってくるんだ？」

「もう少し、ここにいようと思う」

ネズさんのバトルをもっと勉強したいし。

「俺、連絡なしで半年待ってすげー寂しいんだけど？」

「それは色々あって連絡できなくて……」

キバナさんを好きって意識してから、連絡するのが恥ずかしくてできなかったなんて、口が裂けても言えない……！
ってか、寂しいってどういうこと！？

どう説明しようとあたふたしていると、ネズさんが戻ってきた。

「A、さっさとナックルシティに行きやがれです。
このままここにいても、今度はこの男が毎日来るのが想像できてうぜーですからね。

トーナメントもあるし、これ以上俺の手の内は見せねーですよ。
わかったら準備してきやがれです」

「そんな……。
でも納得いかないけど、わかりました。
ネズさん、本当にお世話になりました」

そう言って私は、着替えるために借りている部屋に戻った。