最強チャンピオンの苦悩２ (ページ21)

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人生の転機は突然に　1 ページ21

翌朝、私は美味しそうな香りに誘われて目を覚ます。
どうやら私は、昨晩あのまま寝てしまったらしい。
キバナさんは隣にいなかった。
きっと朝食の準備をしているのだろう。

……私、そういえば昨日の夜、告白して……。

思い出して恥ずかしくなり、掛布団で顔を隠した。

「なぁ、朝メシできたんだけど……。
何で布団に埋もれてんの？」

キバナさんは布団の上から私をつつく。

「いや……、昨日のこと思い出したら恥ずかしくて、今現実逃避中……」

「待てこら。
その現実逃避おかしいだろ」

そう言って、キバナさんは私から掛布団を奪う。

「ちょッ！」

急いで奪い返そうとしたが、敵わない。

「さて、これで起きる気になっただろ？
朝メシ冷めちまうし起きて来い」

案外、あっさりとした態度だった。
若干、拍子抜けしてしまったが、空腹には抗えられずに大人しくリビングに行った。

テーブルには彩りよく朝食が並んでいた。
……そう、ものすごく見栄えがよくお洒落なのだ。

「美味しそう……。
本当にキバナさんって、チャラいところがなければいつでも嫁に行けるのに……」

「チャラくねーぞ。俺は一途だ。
それに"嫁"ではなく"婿"だろ？Aの」

「え、あ、……んん？？」

キバナさんが言っていることに、理解が追い付かない。

「その……、本当は今夜ちゃんとした場所で話そうと思ったんだが……」

何を？
バツの悪そうな顔でキバナさんは席を立ち、棚から箱を持ってきた。

「A。付き合うとかじゃなくて、結婚してください。
俺、Aがいない間に色んな事考えてたんだが、もうあんな思いをさせたくねぇんだよ。
そう思うぐらい、俺の中でAの存在が大きくなりすぎた」

耳まで真っ赤にして、キバナさんは私から目を一切逸らすことなく話す。

嘘でしょ？結婚？
でも間違いなくキバナさんは本気で言っている。

私の混乱をよそに、箱から指輪を出して左手薬指につける。

「あ、あの……、け、けッ結婚て……」

「こんなに意味わかんねーぐらい、Aのことが好きなんだから仕方ねーだろ？
もう黙って俺について来いよ。
嫌ってぐらい幸せにしてやる、約束だ」

あぁ、そうか。
この人はこんなにも覚悟を決めて話してくれたんだ……。

「キバナさん、好き」

「知ってる」

「私、恋愛なんてしてこなかったから、これから困らせることもあるよ？」

「たくさん困らせればいいだろ？」