50 繋がれた両手 ページ2
「あの方は助かりません……残念です」
奥さんになったばかりの彼女の切ない 叫び声 が聞こえる
「灰谷先生、骨盤固定し直して搬送して」
外科医を続けるなら賭けに 勝ち続けろ 昔黒田先生に言われた言葉が胸に刺さる
たった一度の 負け が人生を変えてしまうから
でも私たち医者が 負けて その代償を払うのは 患者 だ
失われるのは 患者の人生 だ
あの時のあの子のように…
____________
翔北に戻り、80代女性の処置を手伝った後1人処置室へ入る
「捻挫かな…」
藍「…大丈夫か?」
「大丈夫です」
ガチャリと音を立てて 彼 が入って来て何もなかったように普通にするその態度に少し苛立つ
藍「足出せ、手当してやる」
「これくらい1人でできます」
私の言葉は無視して私の足を無理やり持ち処置する
藍「悪かった」
「なにが」
藍「7年前も俺はなにも出来ず後悔したのに、また繰り返してる」
「…私のせいだから」
藍「いや。お前のその辛い過去は俺も一緒に背負って行くと決めてる」
「なにそれ」
いつもそう。喧嘩しても必ず 耕作 が折れてくれる
同い年なのにそんな大人な態度が羨ましくもある
藍「お前は俺の荷物背負ってくれるか…?」
少し遠慮気味に、そして辛そうに そう言い包帯を巻き終える
「…耕作が辛い時は私もそれを背負いたい、耕作が笑う時は一緒に笑いたい…耕作の全部を共有したい」
ずっと前からそう思っていたのに、言葉に出来ないまま
私はあなたの前から姿を消した。
向かいに座った耕作は何かを決心したかのように私の両手を握り口を開き始めた
藍「トロント大…辞退した」
「なんで?……奏ちゃん?」
脳外科なら誰しも行きたがる トロント大 それを彼は辞退したと言った…?
藍「天野奏…あの日、杉原さんの急変が重なり彼女のオペを途中抜けた…摘出するまでに戻れると言って、でも思ったより杉原さんの処置が長引き、彼女の元に戻った頃には摘出も終わっていた…」
「え…じゃあ」
藍「約束守ってやれなかった」
もちろん、新海先生の腕が悪かったわけじゃない。
誰も悪くない
だから余計 ぶつけることのできない感情に押し潰されている
ドライに見える藍沢先生は 決して 冷たい医者なんかじゃない。
患者想いの 心優しい医者 だから余計に深く心に傷を負っている
でも 天野奏 はもっともっと深い傷が出来たに違いない……
ただいまは彼をそっと抱きしめあげることしかできない
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さざんか(プロフ) - 完結おめでとうございます。そしてここまで書いてくださってありがとうございました!!!とってもとっても素敵、感動して涙が出ました……この作品に出会えてよかった。どうか届いて欲しい、本当にありがとう。 (8月24日 2時) (レス) id: 2d06e4d39c (このIDを非表示/違反報告)
kokuma(プロフ) - クリームパンさん» コメントありがとうございます。泣きながらなんて本当に嬉しいです(/ _ ; )番外編もできたのでよければまた見に来てあげてください^^ (2017年10月23日 21時) (レス) id: ac63afafb7 (このIDを非表示/違反報告)
クリームパン(プロフ) - コメント失礼します。とても感動しました。もう泣きながら読んでました笑これからも応援しています! (2017年10月23日 16時) (レス) id: bd1ddc4c18 (このIDを非表示/違反報告)
kokuma(プロフ) - 紗智さん» 度々のコメントありがとうございます。皆様のお陰でラストを迎えることが出来て感謝です^^泣いていただけるなんて…嬉しいかぎりです!!また番外編出来ましたら、いらしてください(^-^) (2017年10月22日 5時) (レス) id: ac63afafb7 (このIDを非表示/違反報告)
紗智(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。読みながら泣いてしまいました。また読みます☆ (2017年10月21日 23時) (レス) id: 34ac6a1676 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kokuma | 作成日時:2017年10月6日 21時