俺にできること(2) ページ15
.
どこでも寝られるミツの寝顔は、貴重でもなんでもない。
だけど、疲れた体を引きずって選んでくれたこの場所で見る寝顔は、俺しか見られないものだから。
そうでしょ?
「……ん…ぅ、」
「ミツ…?起きた?」
「…みやっち…?」
「ふふ。そうだよ、みやっちだよー」
「んー…みやっち……」
どっぷりと夢の世界に浸かっていた寝坊助さんが、ようやく目を覚ましたみたい。
口元によだれがついたままの寝ぼけ眼ですり寄ってくるミツを、俺は喜んで受け止めるよ。
「こんな姿も、あと一時間もすれば跡形もなくなっちゃうからね…今のうちに堪能しないと」
「んぁ…なんのはなし…?」
「んー?ミツはかわいいねって話だよ」
「おれはかわいくねー…かっこいいの…」
「そうだね。ミツは誰よりもかわいくて、誰よりもかっこいいよ」
「…んふふ…」
誰よりもかわいくて、誰よりもかっこいいミツは、誰よりも不器用だ。
その小さな体に抱え込む色んなものを、絶対に落とさないように、ひとつも取りこぼさないように無理をし過ぎるミツは、誰かに甘えるってことが本当に下手なひと。
だから俺は、言葉も何も必要ない、ただ俺の体温しかないこの場所で、ミツを迎えてあげたい。
それは俺がミツのためにできることであり、俺にしかできないことだから。
そんな大役を任されてる俺って、やっぱり幸せ者だね。
「ねぇミツ。そろそろ、おはようのチューしてもいい?」
「…ゆるす…」
fin.
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←俺にできること
128人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いちはら | 作成日時:2015年8月22日 16時