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赤いリボンをほどいたら(6) ページ38

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ただ黙って抱き合ううちに、北山と俺の体温が少しずつ混ざり合っていくのを感じる。

その心地よさに、いつまでも酔いしれていたいけど…

俺の鞄の中にはまだ、今か今かと出番を待っているものがあるから。





「ねぇ…あの時の誕生日プレゼント、今も持ってる?」

「…えっ? あ、あぁ、うん」



唐突な俺の問いかけに一瞬ぽかんとした北山は、腕を解いて背負っていたリュックの中をごそごそすると、その中から白いカバーに包まれた手帳を取り出した。

大切にしてくれていることは、手帳を持つその手つきからも伝わってくる。



「ちゃんと使ってくれて嬉しい。ありがとう」

「そりゃ、使うに決まってんじゃん」

「ふふ、そっか。じゃあ、もう一つ使ってほしいものがあるんだけど、受け取ってくれる?」

「え…?」



手帳を両手に持ったまま俺を見上げる北山に微笑み返して、俺は鞄の中から細長い箱を取り出した。

ピンク色に包まれて、真っ赤なリボンをかけられたそれは、俺の気持ちそのもの。



「俺から北山への、クリスマスプレゼント。受け取って?」

「え…ごめん、俺何も用意してない…」

「俺は何もいらないよ。北山がそれを受け取ってくれたら、それが俺にとってのプレゼントだから」

「…?」



プレゼントの箱を手にして、意味がわからないって顔をする北山に、思わず笑みがこぼれる。

そりゃそうだよね。でも、そのプレゼントに込めた想いが、俺の全てだから。



その箱の中身は、オーダーメイドの万年筆。

世界にたったひとつの、俺からの贈り物。



北山が手帳に記していく日々を、積み重ねていく思い出を、その万年筆で刻んでほしい。


そして、もし叶うなら…


北山が描く未来には、俺が隣にいたいんだ。






「これ…今開けてもいい?」

「もちろん」

「ありがとう。…うわ、なんかすっげードキドキする」

「ふふ。喜んでもらえるといいな」



手帳をそっと鞄にしまって、細長い箱を両手に包み込む北山の優しい瞳に願う。


どうか、そのプレゼントを選んだ俺の想いを、自惚れにさせないで。

長過ぎたぬるま湯の日々の中で、確かに感じた北山の愛が、俺の想いと同じ意味を持つと信じさせて。









北山の指先が、そっとリボンに触れた。


その小さな箱から今、俺の想いが溢れ出そうとしてる。





君がその赤いリボンをほどいたら、


もう一度、君に好きだと伝えよう。








fin.

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作者名:いちはら | 作成日時:2015年12月20日 19時

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