PM17:40 料理／レシピ本(4) ページ16
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「俺も横尾さんの作った料理食べてみたいなぁ…」
「いいよ？今度作ってあげる」
「マジ！？え、ほんとにいいの！？」
「もちろん」
「やったぁ！めっちゃ嬉しい！…あっ」
会計を済ませた帰り際、ぽつりとこぼした一言を拾って快諾してもらえたのが嬉しくて、思わずここがレジだってことも忘れてはしゃいでしまった。
慌てて口を押さえて周囲を見回した俺をくすくすと笑った横尾さんは、カウンターの隅に置いてあるメモを１枚ちぎって、おもむろに何かを書き始めた。
家庭教師の割に、お世辞にもあまり綺麗とは言えない字で書き込まれていくのは……電話番号？
「これ、俺の携帯。仕事終わったら連絡してくれる？ついでに好きな食べ物も教えてほしいな」
メモを俺の手に握らせてそう言った横尾さんは、じゃあまたね、とにっこり笑って、後ろ手に手を振りながら去っていった。
……何か今の、ナンパみたいだったな。横尾さんってあんな一面もあるんだ。
思いがけず知った横尾さんの新たな顔に驚きながらメモを開くと、そこには少しだけ歪な＜横尾 渉＞の文字と１１桁の数字の羅列、それから英数字が混じったID。
「…わたるって、こういう字なんだな…」
今日だけで、横尾さんの知らなかった一面をどれだけ知ったんだろう。
「おもしろくてよく噛む、ちょっと意地悪な人」は、会うたびに新しい印象を与えてくる。
先が読めない小説みたいな横尾さんのこと、もっと知りたいな。
まずは仕事終わりに送るラインで、横尾さんの好きな食べ物でも聞いてみようか。
《with Y story___fin.》
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作者名：いちはら
| 作成日時：2015年12月20日 19時
