キタヤマボックスR (ページ32)

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ある日の食卓(3) ページ32

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「はい、お待たせ。熱いから気を付けて」

2度目もサクサクに仕上がったメンチカツを皿に盛り付けて、そわそわと落ち着きのない5歳児の前に差し出す。

大きな瞳をキラキラと輝かせて、「いただきまーす！」と威勢よくメンチカツにかぶりつくと、ミツは幸せそうに顔を綻ばせた。

「んまぁーー！」

「ほんと、美味しそうに食べるね」

「だって美味いもん！」

「…そっか。ありがとう」

何気なく零れた問いに、間髪入れず当たり前のように言い切ったミツ。

それが何だか照れくさくて、誤魔化すように熱々のメンチカツを口に放り込んだ。

口いっぱいに広がる、素朴な味。

俺が作るものは、珍しい料理でもなんでもない。特別手の込んだこともしていない。

それでも、俺の手料理を食べたミツは、いつでもこうして笑顔を見せてくれる。

毎度毎度飽きもせず、まるで初めて食べるみたいなリアクションで、その小さな体全身で「作ってくれてありがとう」って伝えてくれるんだ。

そんな恋人がいるから、俺の料理の腕が上がりっぱなしなのも、当然と言えば当然で。

俺がミツの胃袋を掴んでいるとするなら、ミツはいつだって、俺の心を掴んで離さない。

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