インディゴブルーが燃える(2) ページ28
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「アイドルなんだから、楽しくない時でも笑えるようになったら?まぁ、これは藤ヶ谷にも言えることだけどさ」
“ 藤ヶ谷 ”
唐突に出された親友の名前に、ピクッと頬が引き攣る。
反応してしまったことがバレないように必死で平静を装ったけど、それすらもきっと、この男にはお見通しだろう。
「……俺は太輔ほどじゃないと思うけど」
「いやいや、横尾さんも藤ヶ谷と大差ないからね?俺に言わせれば二人とも同レベルだよ」
「…………」
ようやく絞り出した反論もあっけなく論破されて、俺はまた口籠る。
良くも悪くもあんなにわかりやすい奴と俺が同レベルなんて納得いかないけど、常にポーカーフェイスを何重にも貼り付けたミツからしてみれば、やっぱり俺らは表情筋の鍛錬が足りていないんだろう。
でも、それがどうしてミツの機嫌を上向かせることに繋がるんだよ。
「あのさぁ、結局何が言いたいわけ?俺早く帰りたいんだけど」
「まぁまぁ、そんな怒んなって。ヤキモチ焼きの横尾さん?」
「………はぁ?」
今の状況に全くそぐわないふざけた単語がミツの口から飛び出して、俺は思わず目を剥いた。
どこの誰がヤキモチ焼きだって?
「ふざけるのもいい加減に…っ」
「自分が何に対してそんなイラついてんのか、わかってないでしょ?」
「!」
「でも、俺はわかるんだよなぁ。つーか、俺しかわかんないかも?」
「………」
上目遣いなのに見下されている気しかしない大きな目が、すうっと細められる。
まるで蛇のように、ゾッとするほどいやらしく、なのにどこか美しく歪められた瞳に射抜かれて…
俺は初めて、この男が恐ろしいと思った。
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作者名:いちはら | 作成日時:2016年2月10日 0時