Tell me now▽藤北 ページ1
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“ 目は口ほどに物を言う ”
本当にその通りだと思う。
俺はもう随分長い間、身をもってそれを実感しているから。
「……なに?」
「ぅえっ!?あ、いやっ、別に…!」
「…………」
いくつもの照明に照らされ、鳴り止まないシャッター音を一身に受けながら、リビングを模したソファーの上に寝そべっている俺。…と、俺の後頭部を弾力のある太ももで支えている北山。
ルームシェアをテーマにしたやたら親密度の高いポーズと、無駄に露出度の高い衣装で撮影をこなしていく二人の会話の内容は、俺たちを取り巻く大勢の人たちには聞こえていない。
「別にじゃねーだろ。なんか言いたいことあんなら言えよ」
「え…、」
「着替えてる時からそうだったけど、お前俺のことずーっとチラチラ見てたじゃん。バレてないと思った?」
「なっ…!?」
膝枕の状態で会話しながら、顔と体だけは自動的にポーズを決めていく。
何か話してる、その自然な感じがいいと絶賛しながらシャッターを切るカメラマンの言葉より、今は北山の反応のほうが重要だ。
北山の視線を感じるのは、何も今に始まったことじゃない。もともと目力の強いやつだし、あー今俺のこと見てんなって、背中に感じることも多かった。
だけどその視線が、ある日を境により強く、より熱くなった。
北山の誕生日をサプライズで祝ったあの日から、今まで抑え込んでいた蓋が弾け飛んだみたいに、限界まで膨らんでいた風船が破裂したみたいに、北山が俺を見る目に特別な色がつくようになったんだ。
…いや、多分その色は最初からついていたんだ。
だけど、気付かれないようにずっと隠していたんだろう。
俺に好きだと訴えている、赤とピンクを混ぜたような、熱烈な恋の色を。
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作者名:いちはら | 作成日時:2016年2月10日 0時