【呪術廻戦】 これは、君を想うまでの物語

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吉野にとって五条は死刑を撤回した恩人であるが、自身が以前零した「教師は社会経験を積んでないから子供」という発言を肯定するその性格に乾いた笑いを滲ませたことが何度かある。夏油は五条よりはまともだがあぁやっぱり五条先生の親友なんだな、と思わせる側面があり七海の言う信用、信頼に足るが尊敬できない大人の一人として吉野のみならず高専生徒に認識されているというのはここだけの話。

吉野の発言に強いだけが取り柄だからな、と言い放つ伏黒は五条の振る舞いにうんざりしていることが察せられた。


「ツナマヨ」

「そうですね。五条先生に連絡しましょう」

「じゃあ僕は夏油先生に」

「ちょっ…と待て」


右手で電話のポーズをする狗巻に応じて強いだけが取り柄の最強コンビにこの緊急事態を報告せねばとそれぞれスマホを取り出す。だが困惑に顔を染める加茂が話を遮った。ついて行けないと言わんばかりである。


「君たちは彼が何を言っているのか分かるのか？」

「仕草とかニュアンスでなんとなく…」

「今そんなことどうでもいいでしょ。相手は”領域”を使うかもしれません。距離をとって五条先生と夏油先生の所まで後退＿＿」


その時、加茂の背後に彼の特級呪霊が一瞬で距離を詰めてきた。軽く腕を振るい伏黒と吉野が握っていたスマホを破壊。これで連絡手段は絶たれた。ここまで接近を許したのなら、選択肢はただ一つ。







「【動くな】」


戦うしか、手はない。狗巻の呪言により行動を制限した隙に懐に忍ばせた輸血パックから血液を噴出し術式を発動する。それは先程吉野に向けて放った技。先刻では狙いを外したが、的は大きい。”赤燐躍動”で崩れ落ちそうな体を操作して。


「赤血操術 ”苅祓”！！」

「(ダメージなしか！！)」


流石特級という訳か。頭に直撃したが亀裂も出血も起こらない。だがこれで終わりじゃない。息つく暇が無いように花御の後方から澱月の刺突が襲う。


「ッ駄目か！」


刺さることもなく弾かれた触手に思わず悔しげに声を零した。次手を繰り出したのは空中からの攻撃。滑空する鵺が勢いよく花御に衝突した。翼に纏われた電気が衝撃と共に襲いかかる。上からの襲撃に地面を割り、めり込む足を伏黒が呪具で切りつけた。


「チッ」

「(流石に固いな)」


あの刀、どこに隠し持っていたんだ？、気を抜けない戦況で加茂は一種の現実逃避のように伏黒が手に持つ呪具の所在をふと考えた。

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