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「(合気!?器用な人!!)」
「…アレ!?」
構えようとしたがその手は空を掴んで。視線を前に移せば笑みを浮かべて刀を振る真希、刀を振る。誰の。サァーと顔が青ざめていくのが実感できた。
「いい
「(太刀取り…)」
「返して?」
それを木の枝に摑まり見つめるカラスが一羽。
高専内、一室。そこは幾つもの液晶画面が並んで各々椅子に座り眺める交流会の観覧席となっていた。面々は東京校の夜蛾、五条、夏油、甚爾。京都校の楽巌寺、歌姫。そして黒服に身を包んだ三つ編みの白髪を顔の前に垂らした風変わりな女性。
名を、1級術師 冥冥。そのカラスを操る術式を使い液晶に視覚を繋げることで交流会の現場を遠隔で見るために呼ばれたのである。その際、夏油も呪霊の術式を使って同じ事ができると名乗りを上げたが特級術式安売りすんなと審議の結果却下されたのはここだけの話。液晶は今まさに真希と三輪の戦闘を映していた。
「フフフ、面白い子じゃないか。さっさと2級に上げてやればいいのに」
「僕もそう思ってるんだけどさー、禪院家が邪魔してるくさいんだよね。素直に手の平返して認めてやりゃいいのにさ」
「そりゃ、坊。素直になれねぇオトシゴロだから邪魔すんだろ」
「歳を重ねると間違ってましたなんて言えなくなるんだよ、そういうのは古いって分からないんだろうね」
皮肉を言う甚爾は嘲笑を浮かべて。禪院家の内情は何一つ変わっていないのは真希と会った時から理解した。運がねぇな、アンタもな、初対面だがそんな会話だけで打ち解け合ったのは同胞だからだろう。
「フフッ。金以外のしがらみは理解できないな」
「相変わらずの守銭奴ね」
「それよりさっきから悠仁の周囲の映像がよく切れますけど大丈夫ですか?」
顔だけ振り返り夏油が尋ねる。少しの思惑が滲んだ声を受け、何の支障も無いような表情で口を開いた。
「動物は気まぐれだからね。視覚を共有するのは疲れるし」
「えー本当かなぁ。ぶっちゃけ冥さんってどっち側?」
「どっち?私は金の味方だよ。金に換えられないモノに価値はないからね、なにせ金に換えられないんだから」
その言葉を聞けば最強コンビにはよく分かった。”金”の味方。冥冥の立場は中立のようで中立ではない。それ即ち、こういう意味である。
「いくら積んだんだか」
「これだからオトシゴロは困るね」
「……」
歌姫だけ不思議そうなのは人柄か。
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作者名:ボーダーライン | 作成日時:2022年2月9日 18時