【呪術廻戦】これは、君を叫ぶまでの物語 (ページ2)

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第２６話　思うはあなた一人ページ2

情報屋の仕事で飛行機に乗りこみシンガポールに来た。どうやらシンガポールのとある組織の情報が欲しい、と依頼されたので。ハッキングして情報を盗もうとしたが少しの情報しか集まらなかった。ということで中から調べる、いわゆる潜入調査である。

『まぁ、上出来かな』

或るビルを出て独りごちた。一週間の予定だったが三日で全て集められた。折角だし観光でもするか。

『一番近い観光名所は……』

マーライオン公園。今は昼どき。夜景が美しいシンガポールだが食べ物も美味しいのだ。ちょうど近くにチキンライスのお店もあるし、腹ごしらえしてから観光と行くか。人がいないのを見計らって影からバイクを取り出す。ちゃんと保安検査受けて空港で受け取ったから違法ではない。影に格納しておくと移動に便利なのだ。

『さて、しばしのドライブと行こう』

お腹も満足し、辿り着いたマーライオン公園。さすが観光名所。人が賑わっている。写真を撮るかと周囲を見渡したとき。

「そこの赤い蝶の髪飾りをした美人さん！！」

思わず声の方向に目線をやった先には、金髪をたなびかせる一人の女性。

「どんな男が好み(タイプ)かな？」

『目が綺麗な人かな。どんな逆境でも爛々と感情を映し出す双眼がゾクゾクするね』

っていうか初対面でこの人目で聞くことじゃないでしょ、そう続けると爆笑してイイネ！、なんて言い放った。場所を移してカフェの一角で向かい合う。折角巡り会ったのだ、その場限りにしておくのは勿体ない。

「改めて自己紹介といこうか、私の名前は九十九由基。旅をしながら夢に向かっているってところかな」

『私の名前は、Aさんとでも呼んでよ。仕事でシンガポールにね』

「へぇ、仕事。Aさんは何の仕事をしてるの？」

『それはフェアじゃないね。私のことを知りたいなら君のことを教えてくれないと』

コーヒーを一口。うん美味しい、笑みを零す。九十九由基。特級術師。呪術界から身を離れ”呪霊の生まれない世界”を研究している。身を離れていても、情報は入ってくるだろう。

「はいはい、降参だよ。たまたま見かけてもしかしてと思って声をかけたらビンゴだった」

「黒ずくめで黒髪に赤目で赤い蝶の髪飾り、謎の美女。なんて呪術界じゃ専らの噂だったからさ」

『そりゃ嬉しいね。サインでも用意するべきかな』

一拍おいて、笑い声が弾けた。向日葵を思わせる明るい女性だ。