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手首を貫く釘の傷口から血潮を零しながらも見せつけるようにもう一本の釘を手に持つ釘崎の姿に楽々と捩じ伏せられると思っていた壊相と血塗は先程の痛みに汗を噴き出しながら緊張に心臓を鳴らしていた。軽い痛みならまだ我慢できる。けれど、内部から激烈な痛みを何度も感じていたいとは被虐嗜好でない限り誰も思わないだろう。
これで祓える訳ではない。ショック死する程のものでもない。ただ、延々と続けば慣れが来るが断続的に続くであろう苦痛は精神をすり減らし行動を抑制するくらいのことはできる。狩りは獲物が安堵した時に不意打ちを仕掛けるのがセオリー。仕留めたと思っている捕食者の隙もまた”狙い目”だ。
「痛いのは嫌だろ?なら、さっさと泣きながら術式解けよ」
「(呪詛返しの術式!!我慢比べ…、こちらの術式を解かねばコレが続くという訳か…!!)」
芻霊呪法 ”共鳴り”。対象から欠損した一部に人形を通して呪力を打ち込むことで対象本体にダメージを与える術式。術式範囲の制限は緩く、対象との実力差、欠損部位の希少価値によって効果が変わる。
”血液”は芻霊呪法において決して価値は高くない。だが、”共鳴り”は対象との”繋がり”を辿る。今、釘崎の中にある壊相、血塗の血液は蝕爛腐術の術式で2人と強く繋がっている!!
「(弟の方にも効いたのはタナボタだな。このままじゃ、どーせ死ぬんだ。じゃんじゃか”共鳴り”ブチ込んでやる)」
「(なかなかに強烈。だが何度やっても私たちの命には届かない。我慢さえしていればいずれ死ぬのはアナタ方!!しかも”朽”の発動中は痛みと毒でまともに動け___)」
この戦いにおける勝利の絶対条件は、術式を解除する一択。釘崎は10分、虎杖は15分。術式開示でその幅は当然狭まった。一度発動された術式を解くのは戦闘不能に追い込むのもあるが本調子と言えないならば、脅すしかない。そしてその取引は”共鳴り”で成立するに当たる。釘崎の思惑を悟り、それでも手札を鑑みればまだ優勢だと判断した壊相の目に信じがたい光景が飛び込んだ。
足を大きく開き、体勢を低く握りしめた右の拳に呪力を纏わせて、血塗に視線を固定した、打撃体勢の虎杖が血塗の死角に構えていた。その現実を驚愕に表情を染めて呆然と言葉が口から溢れ出す。
「何故そこまで動ける」
「”共鳴り”」
ここぞとばかりに打ち込まれた釘は弟を守ろうと向かう意思も回避を試みようとする反射神経も阻害して突き抜ける衝撃に思わず歯を噛み締めるだけ。そんなガラ空きの標的の顔面に一切の躊躇なく重い一撃が食い込んだ。
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ボーダーライン(プロフ) - セツさん» わぁ、初コメ有難うございます!そんな、全然失礼なんかじゃないです。嬉しいです!コメントがやる気に繋がります。続編のプロローグは黒影にスポット当てようと思ってるのでご注目宜しければ。コイツの”叫ぶ”を書いた時は感情移入して泣きました。続き頑張ります! (6月12日 22時) (レス) @page50 id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 初コメ失礼します。続編おめでとうございます!続き楽しみにしているので、頑張ってください! (6月12日 21時) (レス) id: a9c1286aea (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - そらさん» コメント有難うございます。2ヶ月近く更新してないので大分お待たせしてしまってすみません!完結まで構想練っているのであとは気力次第。ぼちぼちやりますかぁ!(逃げ道を絶つ)紆余曲折あると思いますがこの大長編にお付合い下さい。これでもまだ中盤なの(小声) (2023年3月27日 16時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2023年3月27日 0時) (レス) @page2 id: b809f0b9bc (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - ご指摘ありがとうございます!焦ったぁー!!気付かせてくれて本当に感謝! (2023年1月1日 14時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ボーダーライン | 作成日時:2023年1月1日 14時