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「あ”?」
「粘膜、傷口。私たち兄弟どちらかの血を取り込み、私たち兄弟どちらかが術式を発動すれば、侵入箇所から腐食が始まります」
「そちらの少年はもって15分。お嬢さんの方は10分が限界でしょう。朝には骨しか残りませんよ」
「やっぱ毒か!!」
「(術式ってことは解除させちまえばいい訳だ)」
「結果有毒なだけであって、私たちの術式はあくまで”分解”ですよ」
「(術式の開示は済んだ。実際はもっと早く死ぬな)」
術式は呪力によって発動する。そして呪力があれば延々と発動し続ける訳ではなく、術式を発動する意図、術式に呪力を流すアクションがなければ術式は稼働しない。以前五条と夏油が呪力を電気、術式を家電と例えたことが虎杖の脳裏を過った。
虎杖には今は術式を持っていないがその理論は理解している。ようは、術式を発動させる隙をなくす、これはもう既に行われているので棄却。となると残りは一つだ。無理矢理解く。この一点。対象を戦闘不能に追い込むか、脅すか。時間以内に倒せばいいが、紳士らしくご丁寧に説明してくれたお陰で”縛り”が働きその時間も短縮された。彼らの掌にはもう既に呪術師たちが捕えられている。後は、どう藻掻く。足掻けるものなら足掻いて見せろ、と彼の兄弟は嗤った。
「さて、どうします?」
「(兄さん。
明治の初め、呪霊の子を孕む特異体質の娘がいた。呪霊と人間の混血、異形の子。身に覚えのない懐妊に始まり親類縁者からの風当たりは常軌を逸し、彼女は子の亡骸を抱え山向こうの寺へと駆け込む。その寺は呪術師が開いたものだったが、その時点で彼女の運は尽きてしまう。
加茂憲倫。多くの呪術文化財と共に、史上最悪の術師として名を残す御三家の汚点。彼の知的好奇心は呪霊と人間の間に生まれた子の虜となる。九度の懐妊、九度の堕胎。それらがどのように行われ、その後彼女がどうなってしまったのか。一切の記録は破棄されている。
呪胎九相図。1〜3番。特級に分類される程の呪物。その呪力の起源は母の恨みか、それとも。
「(母の記憶はない。人間にも術師にも特段恨みがある訳ではない)」
「(150年。お互いの存在だけを頼りに封印を保ってきた)」
呪術師側と結んだ”縛り”は生命を止めて他に害を為さない代わりに存在を保証するというもの。交流を止め、呼吸を止め、命を止め、それでも魂を分けた血縁が在るのなら。例え話せなくとも、心だけは繋がっているからと彼らは許し合った。
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ボーダーライン(プロフ) - セツさん» わぁ、初コメ有難うございます!そんな、全然失礼なんかじゃないです。嬉しいです!コメントがやる気に繋がります。続編のプロローグは黒影にスポット当てようと思ってるのでご注目宜しければ。コイツの”叫ぶ”を書いた時は感情移入して泣きました。続き頑張ります! (6月12日 22時) (レス) @page50 id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 初コメ失礼します。続編おめでとうございます!続き楽しみにしているので、頑張ってください! (6月12日 21時) (レス) id: a9c1286aea (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - そらさん» コメント有難うございます。2ヶ月近く更新してないので大分お待たせしてしまってすみません!完結まで構想練っているのであとは気力次第。ぼちぼちやりますかぁ!(逃げ道を絶つ)紆余曲折あると思いますがこの大長編にお付合い下さい。これでもまだ中盤なの(小声) (2023年3月27日 16時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2023年3月27日 0時) (レス) @page2 id: b809f0b9bc (このIDを非表示/違反報告)
ボーダーライン(プロフ) - ご指摘ありがとうございます!焦ったぁー!!気付かせてくれて本当に感謝! (2023年1月1日 14時) (レス) id: 6d6b1b008a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ボーダーライン | 作成日時:2023年1月1日 14時