全力少女2 (ページ10)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:29,181 hit

愛ってページ10

『…って、言われてんねんけど…』

《せやなぁ…母さんが言いよる事も分かんねんで》

あれからヨコちゃんには「疲れたから寝る」と伝え、懐かしい自分の部屋へ

でっかいハープの横を通り過ぎてベランダに行ってスマホを起動させる

するとタイミングよくかかってきたんが…

『オトンも、はよ結婚してほしい…？』

滅多に帰ってこうへんオトンからやった

ほんまはこんな質問したないねん

オトンとオカンは家同士のお見合い結婚やったから

「私は望まれず生まれたんじゃないんか？」とか

嫌な方ばっかり想像してまうねん

《はよ、とは言わんけど恋愛できる内に、な？》

『……オトンは、オカンと結婚するの嫌やった？』

《ううん、全く……ただ、お見合いする前に出会いたかった》

《あんなにいい人、もっとはよ出会ってたら、お見合いする前に結婚してる》

それは多分、私が1番聞きたかった言葉

心のどこかで「母さんが嫌で海外に行ってる」と思ってたから

愛って、時間も場所も関係ないねんな

《やから、お前も後悔したらアカンで？》

《お前は俺に似て自由な人なんやから、思った時に行動せな》

『……おん』

ｶﾞﾁｬｯ

『誰…？』

「おまっ…寝てへんやんか」

『すばるくん…？』

渋谷「おん…」

扉の音で振り返ると見慣れた人影

月明かりだけやからよく見えんけど、すばるくんと分かるには充分やった

いつの間にかオトンとの電話も切れとって

夏のゆったりとした2人だけの時間が流れる

『珍しいやん、おっちゃんが起きてるなんて』

渋谷「お前居らな寝れんねん」

『…なんやの、それ』笑

ガラス戸に凭れかかって私を見つめるすばるくんは画になって

なぜか知らないけどドクン、と心臓が脈を打った