続 : ソノ恋依存性ニ注意セヨ。[時透無一郎]

依存性52 ページ27

無一郎side

“買い物へ行こうかと”と言うAに
一緒に行くと言うと目を丸くして驚いてた。


そんなに驚かなくても良いと思うのだけど。


“置いてくよ”と振り返ると
慌てて追い掛けて来るAが何だか…



なんて言うんだっけ……愛おしい？とでも言うのかな？


犬が主の後を追い掛けて来るみたいな感じ…？





何だか、心が温かくなる気がした。





･････


時『何を買うの？』

A「今日の夕餉の食材なんですが
まだ決まってなくて…」

時『ふろふき大根かな』

僕がそう言うと“またですか？！”と声を張る。

時『声が大きい。美味しいから良いでしょ』

A「そ、そうですが…」


二人で話しながら歩くのは嫌いじゃない。





たまには一緒に出掛けるのも悪くないな。






………と思ってたんだけど。






時『見失った』



さっきまで一緒に居たはずなんだけど
ちょっと目を離した隙に居なくなった。



もう、めんどくさいなぁ…




取り敢えずその辺を歩いてたら見付かるかな。


と暫く歩くと、ある物が目に入る。




時『…簪？』


桜の形のガラス細工でキラキラと光り
桜の下には小さくて丸い浅葱色の飾りが揺れている。


「贈り物にどうかね？
桜の簪は一点物だから人と被らなくて特別だよ〜」

時『特別…？』

店の主は笑顔で“特別だ！”と言った。



時『女の人はこんなの貰って喜ぶの？』


「ハッハッ！こんなのってのは酷い言い草だな！
だが、間違いなくお客さんの想い人も喜ぶよ」


時『想い人ではないけど』


そう言う僕を見ながら何故か嬉しそうに微笑み


「若いってのは良いねぇ」

と頷いた。




･････



結局、押されて買った簪。



喜ぶって言われたけど本当に喜ぶのだろうか…

どうやって渡せば良いのかも分からないし。


これ、似合うと思って…とか？


そんな事を考えてたら、なんだか気恥ずかしくなる。





時『…いた』


少し先の方に見慣れた姿
直ぐにAだと分かり少し早歩きで向かうと
もう一人居る。



名前なんだっけ、同じ柱で梟みたいな…



Aと楽しそうに話してる。


その人と目が合うと



煉「時透じゃないか！Aがはぐれたと
心配していたが、見付かって良かった！！」

と大きな声で話しかけられた。

A「霞柱様！！すみません、はぐれてしまって…」

と頭を下げるA。


時『別に…』


なんだか、心がモヤモヤとして
サッと手に持っていた簪を隠した。

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