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『ここ、沖田さんのサボり場だったんですね』
『サボりじゃねーよ。巡回ルートの一つでィ』
いや、どう見たってサボタージュしようとしているではないか。土方さんにチクってやろうかと思ったが、その考えは頭を振って打ち消す
彼に嫌われたくないというのもあるが、もう土方さんとも会わなくなるからだ
『……なら、仕事をしましょう。
ここにいる万事屋の旦那は、この団子屋で食い逃げ紛いのことを幾度かやっているみたいですよ』
『おいィ!!
誰がこの店紹介してやったと思ってんだ!恩を仇で返すんじゃねェ!!』
ほらほらと沖田さんの前に旦那の手を引っ張っていこうとしたが、彼に頭を叩かれてしまう
沖田さんはただ私たちの行動を視界の隅に映しているだけのように、興味を示さなかった
『……で、なんでお前はここにいるんだよ』
それ、と私のしている前掛けを指差す
『明日からここで働くことになったんです』
『そーかィ』
サボりにくくなっちまうな、と言って軽く笑う。結局自分でサボりだと認めているではないか
だが、屯所に行かなくても彼と自然に会うことができることが分かった
私にこの仕事を紹介してくれた旦那には、ほんの少し……本当にミジンコぐらいの小ささだけど、感謝している
『早く団子持ってこいトマト』
『あ、忘れてました』
持っていきますね、と店の中に戻るが、浅い溜め息が自然と零れた
彼がもう呼び方を戻してしまったのは、私がもう女中を辞めるからだろう
同じ職場で働く人からただの知り合いに成り下がってしまうというのは、彼にとって線を引くことなのかもしれない
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ミズキ - ハル(6/17)さん» そうだったんですか!私は基本ハッピーエンド派なんですが、このミスター・グルービーだけは例外に、切ない終わり方も良いな、と思えてしまうので、ハッピーエンドもメリーエンドもどちらも捨てがたいです・・・!ただ一つ言える事は、どっちでもこの作品大好きです! (2018年4月27日 15時) (レス) id: d90ef8a117 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - ミズキさん» どちらにも取れるように書きました。読者の皆さんが、この二人の未来がこれからどうなったのか、そんな十人十色の妄想が生まれるように、あの一文だけ書きました。ミズキさんの思う未来の二人にしてあげてください( ´ ∀`) (2018年4月27日 14時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - ゆうかさん» うわ〜〜〜! 嬉しいです!! ありがとうございます( ´ ∀`) 私もこの作品にはとても思い入れがあるので、大好きだと言ってくださりありがとうございます。これからもゆうかさんが何度も読み返したくなるような作品を書いていきたいと思いますので、よろしくどうぞ。 (2018年4月27日 14時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - 質問なんですが、これずっと沖田は夢主の幸せの為手を引いて、夢主は呉服屋の跡取りと結婚したとばかり思っていたのですが、これもしかして夢主は沖田と結婚した可能性もあるんですか? (2018年4月27日 7時) (レス) id: d90ef8a117 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 別のホームページでも今ハルさんの作品を読ませて頂いていますが、この作品が本当に大好きです。何回も読んでいるのに毎回最後は泣けてきて息が苦しくなります(笑)悲しくなるのにまた読みたくなるんです。素敵な作品をたくさんありがとうございます。 (2018年4月9日 2時) (レス) id: baf03f21d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年5月3日 15時