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『余計なお世話だよ!このバカ息子!』
大きく音を立てながら、お婆さんは電話を切った。私の視線に気付いた彼女は「倅がね……」とため息混じりに答える
彼女の息子さんは江戸から離れたところで何やら商売をしていると聞いたことがあった
『……よォ』
暖簾を潜りながら、私に片手を上げる
今日は非番なのだろうか。土方さんはいつもの制服ではなく、着流しを着用していた
外のベンチに座り、私に焼き団子を注文する
『お待たせしました』
彼の傍に置くが、なかなか離れようとしない私を彼は怪訝そうな顔で見てきた
どうやらその理由が彼にも分かったようで、「かけねェよ」と懐から取り出したマヨネーズを長椅子の上に置く
『それは良かったです。ちゃんと護ってくれてますか?』
「1日15グラム」と強調して言えば、彼は呆れたように鼻息を吐いた。分かってるよと言いたげに片方の眉を上げ、団子にかぶりつく
『最近来ねェな』
『本職はここですからね』
「近藤さんも会いたがってるぞ」と言いながら二本目に手を伸ばす。確かに近藤さんとはなかなかお会いできていない
『総悟の手伝いも、お前の代わりに姉がやってるよ』
『……さいですか』
関係ない、といった素振りを見せようとするが、声は少し震えている。きっと土方さんにはバレてしまっているのだろう
それでも何も言わないのは、優しさからきているのか、それとも気にも留めないほど彼にとって些細なことなのだろうか
『……鉄が、お前のこと褒めてたぞ』
『なんて?』
『飯は美味いとか、仕事ができるとかな』
正確には覚えてねェと言うように頭を掻く。しかし、それをわざわざ私に教えるなんて、彼は慰めているつもりなのかもしれない
不器用だなあ、と小さく笑みが漏れた
『勿体無い言葉ですね……』
『そうか? 案外、みんな思ってることだと思うがな』
『……ありがとうございます』
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ミズキ - ハル(6/17)さん» そうだったんですか!私は基本ハッピーエンド派なんですが、このミスター・グルービーだけは例外に、切ない終わり方も良いな、と思えてしまうので、ハッピーエンドもメリーエンドもどちらも捨てがたいです・・・!ただ一つ言える事は、どっちでもこの作品大好きです! (2018年4月27日 15時) (レス) id: d90ef8a117 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - ミズキさん» どちらにも取れるように書きました。読者の皆さんが、この二人の未来がこれからどうなったのか、そんな十人十色の妄想が生まれるように、あの一文だけ書きました。ミズキさんの思う未来の二人にしてあげてください( ´ ∀`) (2018年4月27日 14時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - ゆうかさん» うわ〜〜〜! 嬉しいです!! ありがとうございます( ´ ∀`) 私もこの作品にはとても思い入れがあるので、大好きだと言ってくださりありがとうございます。これからもゆうかさんが何度も読み返したくなるような作品を書いていきたいと思いますので、よろしくどうぞ。 (2018年4月27日 14時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - 質問なんですが、これずっと沖田は夢主の幸せの為手を引いて、夢主は呉服屋の跡取りと結婚したとばかり思っていたのですが、これもしかして夢主は沖田と結婚した可能性もあるんですか? (2018年4月27日 7時) (レス) id: d90ef8a117 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 別のホームページでも今ハルさんの作品を読ませて頂いていますが、この作品が本当に大好きです。何回も読んでいるのに毎回最後は泣けてきて息が苦しくなります(笑)悲しくなるのにまた読みたくなるんです。素敵な作品をたくさんありがとうございます。 (2018年4月9日 2時) (レス) id: baf03f21d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年5月3日 15時