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『お、良い匂いだな!』
近藤さんを筆頭に、続々と隊士の方々が食堂に訪れる。彼らは鼻をひくつかせながら食器にご飯をよそっていった
『えー、紹介する
本日からここで食堂を切り盛りしてもらうことになった、苫野Aさんだ』
『初めまして。どうぞよろしくお願いします』
ゆっくりとお辞儀をしていた身体を上げる。まばらな拍手の中で見つけた沖田さんの姿。大きな欠伸をして、私の紹介になんて一ミリの興味もないのだろう
もう自分のせいで私がここで働いていることを忘れてしまっているようだ
『よし、みんな。食べよう!』
ばらばらのいただきますがどこか可笑しく、何だか大家族の母親になった気分である。美味しいと言う声が耳に入り、鼻高々になってしまう
そりゃあ、30年も続いた老舗の食堂にいたんだ。自分で言うのもなんだが、料理の腕はそこの親父さんの折り紙つき
食べ終わった隊士の人たちは食器を下げに来て、ごちそうさまと笑顔を見せてくれた。それだけで作った甲斐がある。この笑顔が見れるのは料理人の特権であり、至福の時
『おい』
しかし、その至福を邪魔する男が来た。何ですかと上辺だけの笑みを浮かべ彼を見つめる
『米が固ェ』
『そ、総悟…そんなこと無かったぞ?』
何も言わない私に当惑した近藤さんが沖田を止めようとする。美味しかったよなあと周りの隊士たちに振り、彼らも戸惑いながら頷いていた。だが、私は別に怒っている訳ではない
『なるほど。沖田さんは柔らかめがお好きでしたか』
大衆食堂に来たお客さんは、質より量…つまりは土方さんの言っているような「食えりゃいい」人たちが集まっていた。しかし稀にそういう注文をつけてきた人もいるため、慣れている
人の好みは十人十色。固めが好きな人もいれば、柔らかい方を好む人もいる。皆さんはどうですかと聞いたが、彼らは特に無い首を横に振った
『分かりました。
沖田さんの分だけ柔らかめにさせていただきます』
彼は少々驚いた顔を見せるも、その後直ぐに満足気な表情に変わる。
沖田総悟。歳は18で一番隊隊長。私の職を奪った張本人であり、町民からはサド皇子という別称で一目を置かれている
私の持っている彼の情報の中に、お米は柔らかめが好み、というのが新しく付け加えられた
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ハル(プロフ) - ヤミーさん» ありがとうございます!!これからもよろしくお願いしますね! (2017年4月4日 15時) (レス) id: 2c6d364f0d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - リタさん» ヤバイ人からコメント来ちゃったと思ったんですが、貴方でしたか笑笑 また書き始めてるなら教えてくださいね、鹿たん笑笑 コメントありがとう (2017年4月4日 15時) (レス) id: 2c6d364f0d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - pumpアミーゴさん» ありがとうございます!頑張ります! (2017年4月4日 15時) (レス) id: 2c6d364f0d (このIDを非表示/違反報告)
ヤミー - 更新頑張ってください!応援してます♪ (2017年4月2日 19時) (レス) id: f707c0d1ab (このIDを非表示/違反報告)
リタ(プロフ) - 新作おめでとうございます!とっても面白いです!いつも陰ながらひっそり……陰ながらでもないけど、ひっそり応援させてもらっています。ハーちゅわん大好きです。これからも大好きです。笑笑更新頑張ってください((はぁと。笑 (2017年3月31日 14時) (レス) id: 5e2871c323 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2017年3月25日 11時