第三十八夜 囚われ娘とピエロ ページ40
「キミが、クロロのお気に入りとは」
ずい、と奇っ怪な顔が覗き込む。私は目を細めた。強気な態度をとってはいるけれど、ハッキリ言ってすごく怖い。このまま私、この人に殺されるのかな。妙なピエロ染みたメイクを施した彼は、薄気味悪く笑った。
「キミと二人きりになりたかったんだよ」
私は、縛られた腕をほどこうとするが、どうにも固く縛ってあって上手くほどけない。
そんな私を見ても、彼は眉一つ動かさず、トランプを片手でいじる。
「驚いたよ。本当に念が何一つ効かない、とはね。バンジーガムも使えないし、こんな古典的な方法で捕らえなくちゃいけないなんて」
私は顔を上げる。
「……あなたは？」
「ボクはヒソカ。覚えておいておくれよ。多分また、キミの前に現れるだろうから」
「私に……何か用？」
「キミに用はない。ボクはキミに何の興味もないから。ただ、クロロが最近ツレない態度だったから、キミを餌に誘きだしたらどうだろうと思って」
ヒソカは、また笑みを浮かべた。なんだか作りモノのような顔だった。
「それは、作戦失敗ってとこね。あの人は来ないよ。私を捕らえたって、何もない。無駄骨だったわね」
「……随分自信家だねェ」
「朝になったらいなくなる人間を、わざわざ助けに来ようなんて思わないわ」
私はちらりと視線を外に投げる。もう既に、明るくなり始めていた。夜明けは、すぐそこだった。
「それは、初耳だ」
シャッ、とトランプをスライドさせると、私の前にジョーカーを見せる。
「今回は少しキミのことを調べたかったんだ。本当に念能力が効かないのかどうか、をね。これでクロロが来たらラッキーってとこだけれど。この分じゃあ、キミの言う通り、彼は来なそうだ」
今更ながら、私は思った。朝になったら消えるとか、わけわからんことをこの人に喋ってしまって良かったのだろうか。異世界から来た、だなんて馬鹿馬鹿しいにもほどがあるが、それをこのヒソカって人が信じてしまったら……。それって不味いこと？そもそもこの人、クロロの何なの？敵？どういう関係なの？
「……質問があるなら、答えてあげよう。しかしタダで、とは言わない。情報交換だ。キミのことについても、色々と教えてもらおうか」
疑問だらけの私の頭を読み取ったのか、ヒソカさんは一つ提案をする。夜明けまでもう少し。
この茶番を利用して、クロロのことを少し探ってみようか。
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作者名：アユミ | 作成日時：2018年11月15日 0時
