第十四夜 夢が確信へ ページ16
それは、いつも至って当たり障りのない内容ばかり。いつしか、朝起きれば腕を見るのが習慣になっていたのだ。
それでも、腕に書いた記憶もないし、勿論この内容の出来事も、身に覚えがないのよね……
そんなことを思いながら、日記をパタンと閉じる。一体いつまで続けていれば、こんなことは終わりを迎えてくれるのだろうか。それでも、この日記を書くのを辞めないのは、なぜかこれが、とても大切なことのように思えたからである。
きっと何か意味があって、起きている出来事だと思うから。
「クロロ……さん、か」
何となく、日記を遡ってみると、この人物は男性であると予測がついた。他にもよく出てくる単語は、シャルナーク、ウヴォーギン…等々。一体どこの国の人であろうか。最近は、この日記をつけるのが少し楽しみであったりもする。
まるで、本当に自分は、この内容通りの出来事を体験しているように思えるからだ。もしかしたら、そんな夢を見ているのかも知れない。寝ている間、自分の身体を離れたもう一人の自分が、この彼らに会いに行っているかのように。
だから彼女は、この日記をこう呼ぶことにしていた。“夢日記”…と。
クロロ。名前からして、何だか黒そうな人物だ。きっと髪色は黒で…
背が高くて、ほんの少し童顔で、それでいて柔らかく低い静かな声…。
ッハ、とAは思い起こした。
今、私……。誰を思い浮かべた？
Aはもう一度日記を開く。
『今日は雨が降っていた。皆でダウトをして遊んだ』
雨…。
『はい、Aダウトー』
その時、頭に浮かんだ声。
「しゃ、シャルナーク……？」
待って待って。私…。私………！
Aはノートを握ると、片手で頭を抑える。
この内容を……知っている？ そんなことが、あった？ いや、これは……私が見た夢？
『初めまして、Aです』
いや……
「あぁ、……ダメだ……」
これ以上は、思い出せそうに無い。ただ、何度か誰かに言ったような気がするのだ。初めまして、と。そこは、一体どこであったろうか。
「……でも…」
が、これで確信した。これは、ただの妄想の類なんかじゃない。きっと、自分は。
「私は、この内容を、知っている……？」
きっとそうだ。ババ抜きも、ダウトも、腕相撲も、したことがある気がする…！
そして。
『A』
クロロ。はっきりと、今……その人物は、鮮明に、Aの頭に浮かび上がった。
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作者名：アユミ | 作成日時：2018年11月15日 0時
