カゲのたからもの ページ5
｢ボッジさま！！｣
｢あい！｣
｢遊びに来ました｣
その日は非番だったので、久しぶりにデスパーさまのお宅へ足を運んだ。ボッジさまがデスパーさまに稽古をつけてもらうようになって数週間。私も暇さえあればお二人に会いに行くようになり、すっかりここの常連となってしまった。
｢毎回飽きねえな、Aも…｣
玄関へ出迎えてくれたカゲくんに私は笑って言ってみせる。
｢友達と会うのに飽きるなんてことはないのですっ｣
｢A…。そう、だよな！なあ、ちょうどボッジの修行も一区切りついたとこなんだ。Aも一緒に街へ行こうぜ｣
｢はいっ。ぜひ！｣
｢あう！｣
三人で仲良くてくてくと街を歩く。歩きながらカゲくんがふいに思い出したように言った。
｢そうそう。今日はさ、ピクニックしようと思ってたんだ｣
｢あいっ｣
｢まあ、ピクニックですか？｣
楽しそうなワードに心が踊る。ボッジさまもニコニコ笑顔で頷いてみせた。
｢おう。そうだ、Aが好きそうな場所があるんだよ。今日はそこへ行こうぜ！な、ボッジ！｣
｢あぁい！｣
｢私、の好きな…？｣
そう言ってお二人が連れて来てくれた場所は。一面の、花畑。白や淡いピンク、黄色や水色。沢山の種類の花たちが咲き乱れていた。
｢わあ…｣
風に舞ってふわりと浮かぶ花びら。こんなに、綺麗な場所があったんだ…。どこか懐かしく優しい花の香りは、心が透明になっていくようだった。
｢アンタ、花好きだろ｣
照れながら言ったカゲくんに私はこくこくと頷いてみせる。｢この場所は、ボッジが見つけてさ、今度Aをここへ連れて来ようぜって話してたんだ。な、ボッジ｣
｢あいっ！｣
嬉しそうなお二人に、なんだか胸の奥がきゅうっとなるような、嬉しくてでもそれでいて、どこか泣きたくなるような。
そんな、温かな気持ちになった。
｢こんな素敵な場所に連れて来て下さるなんて…。ありがとうっ！カゲくん、ボッジさま！すごく、嬉しいです｣
精いっぱいのありがとうと生まれたこの気持ちをお二人に伝える。ほっぺをリンゴみたいにして嬉しそうなボッジさまと、ニッコニコのカゲくん。
｢へへっ、なんか改まって言われると、照れるっつーか…。それに、お前の言い方、なんか余計に恥ずかしいんだよ｣
｢え、私の？｣
｢なんつーか…｣
あぁ、カゲくんの顔も、ボッジさまとお揃いだ。
ほっぺたが、リンゴみたいに。
｢なんか、眩しくてよ｣
｢眩しい？｣
あぁ、とカゲくんは頷いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アユミ | 作成日時：2022年5月31日 2時
