rain.05 ページ5
A「気持ち悪…」
会社から最寄りの駅までの数分
メイクが落ちないように顔にかかる水を避けながら
なんとかカバンを犠牲にして辿り着いた。
肌にシャツが張り付いて気持ち悪い。
カバンの中にあったハンドタオルで
少し拭いてはみるものの、
すぐに絞れるくらい水を吸収してしまって
もう使い物にならない。
「はぁ…」
私じゃない。
雨の音に便乗して溜息を吐こうと思ったけど
まだ私は空気を吸っていた途中だった。
煩い雨の音に混ざって
クリアに聞こえた溜息は誰?
キョロキョロと周りを見渡すと
私と同じように雨に濡れていた男の人
無一郎「あ…ごめんなさい、聞こえましたか?」
A「あっ、いえ、大丈夫です…」
私の視線に気付いた彼は、
私より少し大きめのフェイスタオルで
毛先の水分を拭きとっていた。
無一郎「それにしても雨…すごいですね」
白いフワフワタオルから顔を覗かせた彼に
その一瞬で、ストンと何かが落ちた気がした。
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ゆっくり四つ葉 - 素晴らしい作品をありがとうございます!眼福です! (2020年9月2日 6時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:微力 | 作成日時:2020年6月15日 15時