思い通りにならない彼女【煉獄杏寿郎】其の弐

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『美味しい！！
煉獄さん、これも食べてみて下さい！
あとこれとこれも！』



杏寿郎「うむ！ うまい！！」




婚約者のフリは知り合いがいる時だけで良いんだと思い、すっかり気が抜けたAは、“お友達”という立場で昨日よりも温泉街を満喫していた。



カメラを手に持ち、食べ物から景色、色々な写真を嬉しそうに撮っている。



それに釣られ、杏寿郎はまるで本当の逢瀬を楽しむように過ごした。




街歩きをしながら時間があっという間に過ぎていく中、杏寿郎は陽が落ちてくると足早に宿へと戻ろうとする。




『もう宿に帰るんですか？
まだお店も沢山開いてますよ？』



杏寿郎「あぁ……
明日の帰りに土産は買うとして温泉にでも入ろう」




『温泉！
私、今日知ったんですけど、あのお部屋限定の秘湯があるみたいなんですよ！！
そこにも入ろうと思います！！
その後は露天風呂に！』




杏寿郎「はははっ！
君、本当に温泉が好きなんだな！



………何だ？ そんなに見て………」







どうしたことか…。
煉獄さんがいつになく楽しそうにしてるとは思ってたけど…今、すごい楽しそうに笑った。




いつも人の顔を見ては溜息をつくか怒っている煉獄さんがだ。





………温泉って本当癒やしの効果があるのね。




凄い効果だ……！



うん、
最後に笑顔が見られて良かったです………！
旅行が終わってからは運命のお相手にその眩しい笑顔を見せて過ごして下さいね…………！






『いえ、笑ったお顔もとても整ってるなぁと思いまして！』





満面の笑みで答えるAに
杏寿郎は一瞬、息をするのを忘れた。









杏寿郎「…………？
何やら今………呼吸が乱れたような………
疲れているのだろうか………」




鼻歌を歌いながら宿へと向かうAを見つめながら、今度は大きく波打つ鼓動に戸惑う杏寿郎の言葉はAには聞こえてはいない。

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