思い通りにならない彼女【煉獄杏寿郎】其の弐

59　▶杏寿郎視点 ページ12

はぁ……………
彼女と会ってからどうも調子が狂う。





鬼殺隊の事も知らない相手を婚約者とし、顔を合わせるつもりも無く、噂が広まれば頃合いを見計らって解消する予定だった。
責務に専念する為とは言え、自分でも最低だとは十分に分かっている。





しかしタイミングよく現れた見合い相手は婚約者にはならなかった。
フリを頼むがそれもいつまでたってもやる気が無い。
いつも訳の分からない事を口走り、
気づけば俺に他の女を充てがう。






…思い通りにならない事ばかりだ。
…何がそんなに気に入らない？






確かに干渉もしない。
俺を縛ることも何も無い相手なのだから別に問題は無いんだ。
そのまま放っておけば良いのに何故こうも彼女を気にしてしまうのか。




婚約者のフリをすると了承を得て、それだけで良いはずなのだが…今更ながらどうして彼女と非番の度に過ごしているんだ………。





いつだって誘えば嫌そうな顔をする相手を何故……。





それにだ…、
色恋物の小説を読み漁るくせに相変わらず男に対しての警戒が無いのは如何なものか。
女性としての自覚を持てと言ったにも関わらず何も分かっていない。





うむ…………
このままあんなのを世間に野放しにしては良くない気がする。
………本当、突拍子もない行動をするからな。
あまり男には近寄らせないようにしなければならない気がする。






…何故かそんな気がとてもする。










………うん？
向こうで何やら声がするな。
他の者もこの秘湯に入れるのか。






……しかしこの声…。






ふむ…
いくらそういった気になったと言えど男湯に恋人を連れ込むとは………理解出来んな。
向こうへ行かなければ見えないだろうが情事の声を聞く趣味は俺には無い。





さっさと出……………、














って、おいおいおい……
あそこで何をしているんだ、あの女は………。





何故、男湯にいる！！？




俺は呼んでいないぞ………
連れ込もうなんて思っていないぞ…！






いや、
それよりもどうしたものか………





どういうつもりで男湯にいるのか知らないが俺がここを出るべきなのか？
しかしその後、更に他の者が入ってくる可能性は無いのか……？




むぅ……………。















…………これはまずい。
入口の方から人の気配を感じるのだが………
どうしたものか…………

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