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Side You
「わ、丸くなってるすごい!」
「練習すれば祥彰もできるよ」
「んーいい、Aちゃんにやってもらう」
「甘ったれんな?」
「厳しいね?!」
二人で相変わらずしょうもないやり取りをしながら、丸まった卵焼きを先ほどのチキンライスの上に乗せる。
…うん、久しぶりにやったけどうまくできた。
「はい」
「え?」
「ぱかってするんでしょ」
「僕がするの?!」
「え、しない?」
「…する!」
ペティナイフを渡すと文字通り恐る恐る差し込んでいく。
ゆっくりと手前まで引ききれば、両側に開いていく。
「うわああとろとろだ!すごい!おいしそう!」
「んふふ、まあね」
趣味だけどこの勉強をしてきた身なのだ、できなきゃまずいんだもの、とは言わずに素直にその誉め言葉を受け取る。キラキラと瞳を輝かせて自分が開いたそれを見ている祥彰に私も嬉しくなりながら、残りの卵液をまたフライパンにいれる。
祥彰はそのお皿をテーブルに置きに行ったかと思えばすぐに戻ってきた。
その手にはスマホ。
「撮ってるから今度はAちゃんがやってね!」
また楽しそうにそんなこと言うんだから、はいはいって私も笑ってしまう。そんな大それたことやってるわけじゃないのに、祥彰がすべてを特別にしてくれるような気がした。
「…んー、さっきのが上手くできたな」
「そお?これも美味しそう」
「そう?よかった」
「僕こっち食べたい」
「え、さっきのが上手にできたってば」
「んーでも、Aちゃんがぱかってしたやつ食べる」
味も見た目もおんなじなのに、そんなこと言われたら私だって祥彰が切ったほう食べたくなるね。
あとはあるもので適当に作ったスープを添えるとすごい!とまた褒めてくれる。…店で当然の仕事しかしてないから、こんなに褒められることもなくてちょっと困る。
二人で向かい合わせに座って手を合わせて食べ始める。
何も失敗してないのは分かってるけど、店とは違って目の前で食べられるとその反応が気になってしまって、目の前の彼が一口を飲み込むまで私は手を動かせなかった。
「美味しい!」
「…よかったぁ」
「お店の味じゃん!すごいねAちゃん、さすがだね」
「ありがと」
私も安心して食べ始める。…うん、美味しい、よかった。それからはいつも通りだった。
いつも煙草を吸うときみたいに、今日のことをお互い適当に話して笑う時間。
いつもより長くて穏やかな時間。
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黄色い恐竜(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます!私も書くことが自粛期間中の楽しみだったので、そう言っていただけて嬉しいです…!次回もよければぜひよろしくお願いいたします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - ぺりさん» コメントありがとうございます!私も大好きな二人をそう言っていただけて嬉しいです…次回はまた雰囲気が変わるかと思いますが、よければぜひよろしくお願いします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - 孤黒さん» コメントありがとうございます!日常的な幸せって素敵ですよね…そう言っていただけて本当にうれしいです!ぜひこれからもよろしくお願いします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
早瀬 - 完結おめでとうございます!コロナで外に出れない憂鬱なこの日々の楽しみがこのお話でした!とってもとっても素敵でした…!!山本さんを幸せにしてくれてありがとうございます笑これからも素敵な物語を楽しみにしています! (2020年6月14日 23時) (レス) id: 0963beb20e (このIDを非表示/違反報告)
ぺり(プロフ) - はじめまして!完結おめでとうございます!陰ながらずっと更新を楽しみにしておりました。山本さんが報われてよかったし、本当に好きな2人でした。次回も楽しみにしております! (2020年6月14日 22時) (レス) id: aef7fed343 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄色い恐竜 | 作成日時:2020年5月21日 21時