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Side You
『Aちゃんはさ』
「んー」
『兄弟いるの?』
「…妹がいる」
『やっぱり。お姉さんっぽいもんね』
「ありがと」
『…典型的な長女って感じ』
「…それどうとらえたらいいのよ」
彼と話すときはいつもこうだった。
脈絡もなく、お互いのその日の出来事を話したり、気になることを聞いたり。
その緩さが心地よかった。
『頑張り屋さんってこと』
「はいはい、ありがと」
『そこあしらうとこじゃなくない?!』
「ごめんて、山本さんもおにいさんって感じよね」
『ねーAちゃん』
「はあい」
『いつになったら名前で呼んでくれるの』
「え?」
『だっておかしくない?!年下の僕がAちゃんって呼んで、年上のAちゃんが年下の僕に山本さんってさ、変じゃん?』
…名前にしてって言ったのは確かに私だけど、Aちゃんって呼び出したのはそっちが勝手にじゃん、っていうのは意地悪かな。私もそう呼んでもらえてうれしいからいいんだけど。
「…じゃあなんて呼ばれたい?」
『えー、んー』
「よしくん?」
『…』
「…違うな、やだな」
『うん、Aちゃんが呼ぶのはなんか違う』
「祥彰」
『…』
「うん、祥彰、これでいいね」
『へへ、うん、なんか恥ずかし』
「呼んでほしかったのはそっちでしょ」
まるでどっちが女子かわからない反応である。かわいらしい。あーあ、ただのファンだったのに、夜な夜な電話して名前で呼び合う仲になっちゃったよ。
『Aちゃん楽しそうだね』
「うん、楽しい」
『そりゃなにより。Aちゃんが楽しいのが一番』
「…祥彰はたのし?」
『僕?もちろん』
じゃなきゃ毎晩こんなことしないって、とけらけら笑う彼。
…もっと近くに居たいと思った。優しい声は耳元からすぐ聞こえるのに、その人は距離も高さも違うところにいて表情もなんとなくしかわからなくて、それがすごくもどかしかった。
この奇妙な関係のままでいいから、もっと近くにいれたらいいのに。
「ねー」
『んー』
彼は煙を吐き出す。それがゆっくり夜に溶け込んでいく。
「会いたいかも」
ごめんね、そのやさしさに甘えてばっかりで。
『…じゃあ明日お店行くね』
「…なんかキャバ嬢との会話みたいだねこれ」
『言い出したのAちゃんだからね?!』
「そうだけど」
お互いの本音も、煙と一緒に夜に溶かしてしまおう。
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黄色い恐竜(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます!私も書くことが自粛期間中の楽しみだったので、そう言っていただけて嬉しいです…!次回もよければぜひよろしくお願いいたします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - ぺりさん» コメントありがとうございます!私も大好きな二人をそう言っていただけて嬉しいです…次回はまた雰囲気が変わるかと思いますが、よければぜひよろしくお願いします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
黄色い恐竜(プロフ) - 孤黒さん» コメントありがとうございます!日常的な幸せって素敵ですよね…そう言っていただけて本当にうれしいです!ぜひこれからもよろしくお願いします! (2020年6月15日 14時) (レス) id: f5683b3f6a (このIDを非表示/違反報告)
早瀬 - 完結おめでとうございます!コロナで外に出れない憂鬱なこの日々の楽しみがこのお話でした!とってもとっても素敵でした…!!山本さんを幸せにしてくれてありがとうございます笑これからも素敵な物語を楽しみにしています! (2020年6月14日 23時) (レス) id: 0963beb20e (このIDを非表示/違反報告)
ぺり(プロフ) - はじめまして!完結おめでとうございます!陰ながらずっと更新を楽しみにしておりました。山本さんが報われてよかったし、本当に好きな2人でした。次回も楽しみにしております! (2020年6月14日 22時) (レス) id: aef7fed343 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄色い恐竜 | 作成日時:2020年5月21日 21時