【QK】煙草と珈琲と君【ymmt】

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Side You


「結局こんな時間」


あまり独り言は言うタイプじゃないけれど、休日出勤をして結局いつも通り日付が変わる少し前まで店に居たら、一人でも愚痴は言いたくなるだろう。
明日の出勤が昼の会議からなのもあり、どうせ来たならと仕事を始めれば結局こう。悪いのは私なのかしら。ぼんやり考えながら冷めきったコーヒーを飲み干し結んでいた髪の毛を下した。ブリーチした毛先がだいぶ傷んでる。そろそろ美容院行かなきゃなぁ。次何色にしよ、なんて考えつつ、荷物を持って裏口から出て、煙草を咥える。

今日の山本さん、かっこよかったなぁ。
真剣な顔でパソコン見てるのも、ぼーっとコーヒー飲んでるのも、何しても様になって、あれで頭もいいんだから、神様はひどいね、彼にいくつ与えたのよ。
私なんて、休日出勤してこの時間までいるんですけど。
別に彼と対等になりたいとは思わない。彼が相応の努力をして今生きているのは分かっている。
でもさ、私だって必死に生きてるんだけどな。

なんだか無性にむなしくて悲しくなって視界がぼやけた。


「ばかみたい」


また吸い込むと、いつの間にかそれは短くなっていたらしく、思ったよりも濃かった煙に小さく噎せた。


「…宮前さん？」


心配そうな声が聞こえた。え、と顔をあげると、コンビニの帰りか小さなビニール袋を提げた山本さんがいる。
いつもとは違う、だいぶラフな格好がなんだか新鮮。


「大丈夫ですか、てかまだ仕事してたんですか」

「え、あ、まあ、そうですね」

「お疲れ様です。…ご一緒してもいいですか？」


この暗さじゃちょっとにじんだ涙ばれないよね？噎せてるのも見られたよね？ちょっと噎せたせいにできるよね？なんて頭フル回転させてると、彼から発せられたお誘いは思わぬもので、彼の手にはしっかりあの長方形の箱がある。


「…山本さん、吸うんですか？」

「んー、最近」


どうぞ、と譲れば優しく微笑んで、手慣れた様子で火を点けている。最近、かあ。そりゃまあ山本さんにもいろいろあるだろうしな。彼に倣って私も二本目を吸い始める。斜め向かいで煙を吐き出す彼は、普段動画で見る彼とは全く違う人だった。


「…ん？」

「あ、いや、似合いますね」

「ほんとですか、よかった」


低い身長ゆえ可愛いと形容されることが多いけれど、やっぱりこの人はかっこいい。煙を吐き出した彼はこちらを向いた。


「僕ね、宮前さんともっと仲良くなりたいんです」

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