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「…うまそうに食うとったな」
わたしの食事が終わった頃、それを見計らったかのように宮選手が隣に座った。
唇を尖らせて、どこかふてくされた声。さすがにさっきの店主との言い合いを引きずってるわけではないだろうけれど。
店主が出してくれたお茶を飲みながら小さく頷くと、その唇がさらに尖った。
「俺、間違うてたよな。
俺とおった時、自分あんな顔してへんかったし」
『え?』
「俺、別にあんたを困らせたかったわけやないねん。
でもあんたからしたら、初対面の男に急にあないなこと言われて、そら戸惑うわな」
宮選手の言う、あんなこと、が数時間前のアリーナ裏でのことだと理解するのに数秒かかった。
急に自己を省みだした宮選手に、言葉が出てこない。
店主がお皿を洗う、カチャカチャとした音がやけに大きく聞こえた。
いや、もうその通りです。
突然すぎて戸惑う以外ありませんでした。
そう出かかったけれど、それを何とか理性で押し戻したら、代わる言葉が出てこなかった。
「でも俺、Aのこと好きなんはほんまやね
ん」
『っ…!』
「今日、ここで会えたのもむっちゃ嬉しかってん」
思わずお茶を吹き出してしまい、慌てて拭いた。
突然の告白。それに加えて不意にぶっこまれた名前呼び。告白自体はされていたけれど、これはまた何かが違う。
真剣な瞳と相まって、ドキリとした。
やっぱり、分からない。
彼がどうしてわたしに執着するのか、いったい何に惹かれたのか。
どうして、そこまで切なそうな顔をするのか。
分からないのに、その姿に胸がざわついた。
わたしは宮選手のことを何も知らないのに突き放した。彼がテレビや雑誌の中の人だと、そっち側が似合う人だと、決めつけた。
それが180度ひっくり返ったわけではないけれど、少なくともこんな姿は想像もしていなかった。
彼が自己を省みたように、わたしも、何か変わってもいいのかもしれない。
「友達からでええから。
俺のこと、ちゃんと見てくれへん?」
真っ直ぐ目を見てそう言われて、わたしはゆっくり頷いた。ちゃんと、自分の意志で。
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さな(プロフ) - ラブリーハートのプリキュアさん» ラブリーハートのプリキュアさん、ありがとうございます!身に余るお言葉、、嬉しいです😂侑くんらしさを出せるよう頑張ります!ぜひよろしくお願いします! (2023年3月6日 19時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
ラブリーハートのプリキュア - 初めの文から好きです。なんかもうあの語彙力が神ってて!!表現の仕方が好きです。まさかこのシリーズに侑君が出るとは。頑張って下さい! (2023年3月5日 9時) (レス) @page1 id: 0b96e038f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな | 作成日時:2023年3月5日 0時