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いつの間にかアイツにすげぇ惹かれてるとか。
先輩らが相変わらずアイツにワーキャーしてるとか。
茂庭さんがやたらアイツと親しげだとか。
色んなことが頭ん中をぐるぐる回ってた。
能天気なもんで、Aが俺のことどう思ってんのかなんて、今まであんまり気にしてなかった。
今のまんま、このままいけば自然に、向こうだってその気になんじゃねぇかって、勝手に思ってた。
でも、それは勘違いだったのかもしれない。
全部、俺だけ、だったのかもしれない。
色んな感情が混ざり合った、その結果だった。
「でも本当、あんな清楚でおしとやかな女性、現実にいるもんなんだな」
「Aさんくらいじゃねーか?それに…」
「つーか先輩ら、それ前提で話してますけど。
あの人、そんな言うほど清楚でもおしとやかでもないっすからね」
興奮したように話し続ける鎌先さんを遮って、そう口にしていた。
数秒間の沈黙と、先輩らの目線が自分に集まってることに気づいて、それからようやく己の失敗を認識した。
目をこれでもかと見開いた鎌先さんを見て、できるだけ動揺を悟られないように表情筋に力を入れた。
「……オイ、二口」
「はい?」
「何でお前がAさんのそんなこと知ってんだよ!?」
「何すか、俺にはそう見えるって言っただけっすよ。
変な言いがかりはやめてくださーい」
予想通り、声を荒らげて噛みついてくる鎌先さんをかわして逆に煽った。上手くいなせた気がするし、良くも悪くもいつもの空気になったと思う。
ちょうどタイミングよく入ってきた青根と、そのゴツい腕に抱えられた大きな花束のおかげで、この話も完全に終わりを迎えた。
サプライズ的な花束は、それはもう喜ばれた。
今まで散々迷惑かけた、問題児だった俺と青根からってのがよほど感動的だったのかと思うと、ちょっと複雑だけど。
顔をくしゃくしゃにして、泣きそうっつーかほぼ泣きながら花束を持つ茂庭さんに礼を言われて、青根と顔を見合わせた。
そのままいつもの俺らからは考えらんないほど写真を撮ったりして、気づいた時には面会時間は終わっていた。
今日で最後になる病室を出ながら、廊下を見渡すけれど、探している姿は見当たらなかった。
スマホに送られてきていた写真を開けば、学生時代以来のそれに思わず口元が緩んだ。
照れくさい気持ちと一緒に、どこかざらつくような、小さな引っかかりを覚えたまま、俺はエレベーターに乗り込んだ。
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さな(プロフ) - 柴田んぬさん» 柴田んぬさん、ありがとうございます!楽しんでいただけるように頑張ります! (2023年1月22日 22時) (レス) id: ee78dfa46a (このIDを非表示/違反報告)
柴田んぬ - このお話すごく好きです!応援しています^^ (2023年1月22日 16時) (レス) @page5 id: 8796ade977 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな | 作成日時:2023年1月20日 18時