大事なひと２【木兎光太郎】【赤葦京治】

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7月末。
梟谷学園、というより世の学生は無事に夏休みを迎えていた。



夏休み初日から、光くん達バレー部は例の合同合宿の第2弾。今回は埼玉の森然高校でやるのだとかで、しばらく東京にはいないらしい。


木葉くんと雪絵先輩は相変わらず誘ってくれたけど、さすがに1週間の合宿に単身乗り込む勇気も図々しさも持ち合わせていなかった。

お土産買ってくるな！と笑顔の光くんに、合宿のお土産って何、と笑ってツッコんだのも記憶に新しいのに。






『何でこうなるかなぁ…』






今はその森然高校の体育館の目の前で、こみ上げる苦笑いを隠すこともできなかった。



別に大した経緯はない。
家でダラダラしてるなら、と家族に引っ張ってこられた親戚の家が都合よく埼玉だった。

お盆を前にお墓の掃除でもしようと家を出て、ついでに天気がいいから散歩でも、と思って。
緑が多い道を通って、こんなところに学校がある、なんて思えばそこが森然高校だった、というだけの話だ。





そんな経緯でも、光くん達がこの奥でバレーをしていると思うと、そわそわしてしまうのは仕方ない、はず。

おかげで、かれこれ10分。
ここから動けずにいるわけだけど。



それでも、部外者であるわたしが入る場所ではないことは重々承知している。

やっぱり大人しく帰ろう、と思った時だった。
視界の隅で、鮮やかなオレンジ色がぴょこん、と揺れた。






「あれ、バレー部の関係者の人ですか？」

『あ、いやわたしは…』

「でもそれ、梟谷のジャージですよね！
おねーさん、もしかして梟谷の人？」






ぴょこぴょこ、効果音がつきそうな動きで、オレンジ色の頭の男の子がこちらを覗いている。

その彼の言葉を聞いた瞬間、自分の着ている服を思い出して後悔した。



どうせ掃除と散歩だけだから、と、学校ジャージを履いたまま出てきていた。




でもズボンだけだったのに。
小さな梟谷の文字を目ざとく見つけるなんて…

いや、そもそも女子高生が休日に学校ジャージを着て出歩くのがいけないのかな。






「バレー部こっちですよ！
俺もバレーやってるんです！体育館案内します！」

『え、あの…』






そんな葛藤も知らず、急に現れた元気な男の子は
そのまま勢いよく声を張り上げて進んでいく。

わたしの声は届いている様子もない。





小柄な、オレンジ色の頭の男の子。
烏野高校の、1年生コンビの一人。

何となく、光くんみたいだと思って、無意識に彼の後を追っていた。

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