14話: 剣持結鶴 ページ16
「ほんとすみません、いつもありがとうございます…」
俺はあからさまな苦笑いを浮かべながら、目の前の俺の腕に包帯を巻く、空先輩にお礼と謝罪を述べた。
空先輩は丁寧に包帯をくるくると俺の腕に巻いていく。その手際の良さと言ったら、病院の看護婦だって顔負けじゃないかって感じだ。
…これも俺がいつもお世話になってしまっているからだろうか。そのせいで慣れてしまっているのであれば、俺は申し訳なくて仕方がない。
そんな考えが過ぎり、また俺は小さく謝罪してしまった。何だかとても居た堪れない気分だ…。
「良いんだよ、結鶴くん!」
空先輩は相変わらず明るい笑顔で応じてくれた。
…世の中に彼ほど心の広い人はいないだろうと深く感じた。
「__にしても、この怪我どうしたの?結構深く切れちゃってるけど…」
空先輩は手を動かしながら俺にそう尋ねた。
…うっ…痛いところをつかれた。空先輩は時々俺がヒヤッとするような事を突いてくる。
でもそれは明らかに空先輩の善意、優しさからだ。
「いや、ちょっと転んだだけです。…別にドジじゃないんですけど、よく怪我しちゃうんですよね…はは」
全くドジじゃない。わかっててやってんだ。…だって、すぐそこに鋭利な物があったら皮膚に当ててみたくもなるだろう!?
…いや、きっと普通の人ならならないんだろうけど…。
もういっそのこと空先輩には性癖バラしした方が良い気がする。でもそれで引かれたら俺はもう生きていける気がしないよ…。
俺は深い深いため息をついた。本当に迷惑な性癖だ。こんな性癖、できるならば目覚めて欲しくなかった…!
…そして俺は、性癖関連のことになると1人の顔が思い浮かんでしまう。この性癖を持って、一つだけ良かったことがある。
翅先輩と出会えたことだ。
…嫌、むしろ不幸な出会いだったかもしれない。これはもしかしたら悲劇なのかもしれない。
それでも俺はあの人を求めてしまう。…自分でも好意を抱いているのか、よくわからないけど…でも、きっと会いたくなってしまうのは好きな証拠だと思う。
「…空先輩、ありがとうございます」
__今俺、ものすごく翅先輩に会いたい気分だ。
今日も俺はこうして彼の元へ足を運んでしまう。今日も俺は彼からの痛みを求めてしまう。
やっぱり俺は全然まともじゃない。
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なるせ(プロフ) - 更新終わりました! (2019年5月6日 16時) (レス) id: af1a978d4d (このIDを非表示/違反報告)
なるせ(プロフ) - 更新します! (2019年5月6日 15時) (レス) id: af1a978d4d (このIDを非表示/違反報告)
櫛鉈(サブタブ) - 更新終わりました (2019年5月5日 22時) (レス) id: 045ecd0b94 (このIDを非表示/違反報告)
櫛鉈(サブタブ) - 更新します! (2019年5月5日 21時) (レス) id: 045ecd0b94 (このIDを非表示/違反報告)
京将(プロフ) - 更新しました。ギャグ要素が抜けてしまった…! (2019年5月2日 15時) (レス) id: 8bab4445ef (このIDを非表示/違反報告)
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