15話:ルーネ・サーシュ ページ17
「あぁっ藻武雄、好きぃ」
「俺も好きだよ、臼太ぁ」
「んっ、キス…する…?」
さっきから後ろがうるさい。
ボク−ルーネ・サーシュは、必死にこめかみのひくつきを抑えていた。
一応弁解すると、ボクは別にこいつらが男同士で恋愛しているのを否定的に捉えているわけではない。
恋愛対は個人の自由。それに、別に公共機関でキスしてるやつなんてボクの故郷にはわんさかいる。
だけど、一応TPOはわきまえた方がいいんじゃないだろうか?先生も青筋を立てているし。
そう―言うのが遅くなったが、ここは学校である。
ついでに言えば授業中である。
もう一度言う。授業中である。
後ろの席の
人畜無害そうなのは名前だけだった。
しかもこんなことをしているのは、この二人だけではないのだ。
移動教室までの廊下で見てしまった、ディープキス中の女子生徒達。
何を思ったか水泳の授業中に胸を揉みあい出すクラスメイト(野郎)。
休み時間なんて地獄だ。
恋人と昼食を摂るために鬼気迫る表情で通路を走り抜ける先輩達に何度飛ばされたことか。
ゴツい三年生に吹っ飛ばされた時は死ぬかと思った。
中庭にはいちゃつくカップルばかり。普通のカップルならまだいいが、この学園の生徒達はなぜかみんな拗れた性癖を持っているのだ。
恋人の足を美辞麗句を尽くして褒めちぎる生徒。
首を締めあうカップル。
挙句の果てには鞭で恋人を殴る上級生(ご褒美らしい)。
安心して休息をとれる訳がない。
なので、いつも木の上や園芸部の温室でしのいでいる。
温室に入ると、ふわっと木の香りがボクを包んだ。
この香りは…モク太郎とチョウちょっちょかな?
ちなみにモク太郎とチョウちょっちょと言うのはボクがキンモクセイとイチョウにつけたあだ名である。
我ながら完璧なネーミングセンスだと思っている。だが、だれも褒めてくれないのだ。何故だ…
その香りの中に、別の香りが混ざった。
「ん…!これは…!」
そうだ、今日はカスミと待ち合わせしてたんだった!
ボクの唯一の理解者かつ…恋人のカスミ。
この学校でただ、カスミとの時間が本物に思える。
狭い温室の一番奥に彼はいた。
「もう、遅いよ」
そう言いながらも、カスミは満面の笑顔を浮かべてくれる。
「ごめん」
「許す」
カスミはそう笑う。
ボクはこんな−平凡な日常が大好きだ。
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なるせ(プロフ) - 更新終わりました! (2019年5月6日 16時) (レス) id: af1a978d4d (このIDを非表示/違反報告)
なるせ(プロフ) - 更新します! (2019年5月6日 15時) (レス) id: af1a978d4d (このIDを非表示/違反報告)
櫛鉈(サブタブ) - 更新終わりました (2019年5月5日 22時) (レス) id: 045ecd0b94 (このIDを非表示/違反報告)
櫛鉈(サブタブ) - 更新します! (2019年5月5日 21時) (レス) id: 045ecd0b94 (このIDを非表示/違反報告)
京将(プロフ) - 更新しました。ギャグ要素が抜けてしまった…! (2019年5月2日 15時) (レス) id: 8bab4445ef (このIDを非表示/違反報告)
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