9話: 白菊露○ ページ11
「失礼しました」
職員室の扉を閉め、慣れた廊下を歩き出す。
朝早く、校内に居るのは僕を含めてまだ複数人の生徒と教師だけ。
普段の騒がしさはまだなく、朝の寒さと相まって自分一人しか居ない錯覚に襲われる。
『保健室』というプレートのかかる扉に先程借りてきた鍵を差し込めば一切の抵抗無く「カチャッ」と小さな音が響く
小さな音が響く一人だけの空間
その音を掻き消すようにわざとらしく大きな音と共に扉を開ける。
中を覗けば白を基調とした、誰一人居ないいつも通りのその光景
いつも通り鍵をフックに掛け、いつも通りカーテンを開ける
そして、いつも通り水道の所にある鏡に一瞬だけ写った諦めたような笑みを浮かべた誰かはきっと気の所為だ
椅子を引き今日の分の日誌を書く
日付、天気、気温……そうしている間に生徒や教師も登校して来る。
少しづつ増えていく声と温かくなっていく風
幼い頃から身体が弱く、余り外で遊ぶことは出来なかった。
そんな僕に友達は中々出来ず、出来たとしても発作などの時に迷惑をかけ皆離れていった。
気づけば、それは幼い僕に決して見える事のない大きな傷を付けていた
最近は、大分落ち着いて毎日のように学校に来れるし、長時間でなければ運動も出来る。
それだけでも僕にとっては夢の様な事だった。
だが休みがちで保健室に来るので精一杯だった高校一年生を過ごした僕に友達は居ない
今でも時折起こる発作の様なもののせいで教室に行けば迷惑になるのは目に見えている
昔のように
だから、僕はいつも保健室に通う
いつだったか仕舞いこんでいた思いは溢れ出て言葉になっていた。
『友達を作りたい』
その言葉を先生にきかれていたのか、その日から「ここを手伝わないか」と言われ生徒達の手当てをするようになった。
手当てをする間はよく話しかけてくれる子もいる。
そして手当てを終えた彼らは扉の開く音と共に響く、彼らを呼ぶ声に見ているだけでポカポカしてくるようなそんな笑顔を向ける。
僕は、そんな笑顔を許可を貰い写真を撮る
僕はそれ以上望まない
僕は見ているだけで十分だ
まるで言い聞かせるように頭の中でその言葉だけがグルグル回る
朝礼を告げる鐘の音にハッとする。
イスから立ち上がり、一つ伸びをする
今日もケガして、ココを訪れる人が居ませんように
そんな想いを胸に今日も僕は一人、ココに居る。
「
____
友達になってくれる方はいませんか(切実)
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なるせ(プロフ) - 更新終わりました! (2019年5月6日 16時) (レス) id: af1a978d4d (このIDを非表示/違反報告)
なるせ(プロフ) - 更新します! (2019年5月6日 15時) (レス) id: af1a978d4d (このIDを非表示/違反報告)
櫛鉈(サブタブ) - 更新終わりました (2019年5月5日 22時) (レス) id: 045ecd0b94 (このIDを非表示/違反報告)
櫛鉈(サブタブ) - 更新します! (2019年5月5日 21時) (レス) id: 045ecd0b94 (このIDを非表示/違反報告)
京将(プロフ) - 更新しました。ギャグ要素が抜けてしまった…! (2019年5月2日 15時) (レス) id: 8bab4445ef (このIDを非表示/違反報告)
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