【MHA】スイ◯チに突っ込んだら個性イカになってた私。 (ページ9)

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まんめんみー！７ページ9

「待ってくれ、イカちゃん。」

…何がどうしてこうなったのか。
体力テストも無事終わり、相澤先生の「除籍処分は嘘です」発言で解散した１年Ａ組。
今日はこれにて授業終了なので、それぞれが鞄を持ち帰宅態勢に入っていた。私もその１人な訳で。

リュックを背負って教室を出る。そこまでは良かった。何故か後ろから轟くんに引き留められたのだ。

若干息切れしていた彼から想定出来るのは、私を探すために走っていたのかな…？まあ、あり得ないけど。

「あ、轟くん。お疲れ様。」どうしたの？と聞くと、数mあった距離が縮まり、残り５０cmまで来たと思ったら、

「一緒に帰ってほしい」

とまさかの発言。
…どんな少女漫画の展開だろうか。いや、夢小説あるあるじゃないのかこれは。

「は、ハイ。」

あるあるな展開に即答してしまった私を後で殴りたいと思ったが、私の返答を聞き嬉しそうに「行こう」という轟くんがとても可愛らしく見えて自分ナイスと少し思ったことは彼には内緒だ。

.

夕日が照らす河川敷、２つの影が横に伸びている。
今、横目に川を見ながら轟くんと談笑していた。
「イカちゃんはどうして雄英に来たんだ？」

イカちゃん呼びから離れられないのか、それとも私の名前を忘れたのか。イカちゃんと呼ばれる度、ドキッとするのはギャップ萌えなだけと信じたい。
「私は…。なんとなく、使命感？」

「何かに追われているのか？」「いやあ別に大したことじゃないよ。私自身で決めたこと。」

何故だかこの世界に来た時を思い出した。
私を拾ってくれたお爺さん。あの人のお陰で今がある。この世界は挫折しかけていた前の人生の私に、殻を破るチャンスをくれたトリップでもあったと思う。

「特別な理由がある訳でもないけど、何かやりたいって欲が無くなったらダメなんじゃないかって気づいたんだよね。私、特別器用な訳でもないし。

色々悩んだけど、まずは１つ、"欲"を見つけることにした。そこから理由を探して…」

何言ってるかわかんなくなっちゃったね、と付け足すと、彼は薄く微笑んで、
「…何かに全うする理由があるっていいよな」
と直ぐ暗い顔をした。

原作を読んでいたから何となく察するのは、彼の父親、エンデヴァーの事だろう。

「…轟くんは何かあるの？」

「俺は…ない。」
即答で返ってきた返事に、なんとなくストン、と納得する自分がいる。なんて返せば良いのかわからない。

暫くの沈黙に、春の虫の鳴音が私の耳にこだましていた。