嫌悪 ページ9
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坂田くんに送ってもらって、私は授業の用意をしてからすとんと席に座った。
周りはまだ休み時間の熱が冷めておらず、ガヤガヤとしている。
けれど、私の耳には何も入ってこない。
頭の中で反芻される、坂田くんの声。
思わず机に突っ伏してしまう。
『弁当食うだけが恋人じゃねーだろ』
彼は私を恋人と言った。
私はその言葉に迷い、戸惑い、そして頷く。
その胸は罪悪感で溢れていて、今にも叫びたくなった。
『ちがうよ、私は貴方を好きじゃない』
そう言えば済むのに、体がそれを許さない。
繋いでくれた手。絡むことはなかったけれど、私の手を包み込んだ指。
そのすべてに胸は高鳴るのに、同じくらい痛んだ。
恋って、こんなんだっけ。
――――これって、本当に運命?
坂田くんからすれば、私は神を信じて人を殺す宗教者のように見えているのではないだろうか。
運命、運命運命運命運命。
坂田くんへの胸の高鳴りを知りたくて、必死で彼に囁いた言葉はそれだけだ。
「――――やば」
私、めちゃくちゃ気持ち悪いじゃん。
口元を手で覆い、吐き気すらしてきそうな今の心情をどうしたものか。
顔から血の気が引いていく。正気に戻った気がした。
運命なんてないって、坂田くんは最初から・・・・・・思ってた、よね。
うわぁ、と今度は違う意味で顔を覆う。
何それ。何それ何それ!! 私、超恥ずかしい、イタい女じゃない!?
そして、同時に気付いた。
でも、この感情は嘘じゃない。
運命だから心臓が高鳴る、とかじゃなくて。そうじゃなくて。
助けてもらったり、励ましてもらったり、手を繋いだり。
1つ1つのことで高鳴るこれは、運命だからだとか思ってたけど、これは?
「――――・・・・・・えっ、と」
まず頭を整理しよう。
・・・・・・まず第一。私は恋をしたことがなくて、少女漫画に憧れていて。『初めて会ったとき心臓が高鳴ったら、それは運命の相手』というのを読んだとき、「素敵だ」って思ったのを覚えている。
だから一目見て心臓が跳ねない場合、その人とは付き合わない。
そう決めていた、私の前に
――――そう、坂田くんが現れたのだ。
彼だ! と思ったし、当然運命だと思った。・・・・・・けど。
「・・・・・・違う」
何かが違うんだ。
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