満点 ページ1
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「何位だった」
「言わねーよ」
そうか、とニヒルに笑う幼馴染みは、俺の順位が低かったのを知っている。
高校で学年が上がるのを2回経験した。つまりは高校３年の春、定期的に行われる試験のうち1回の俺の総合順位は平均的だった。
現国は得意だと自負しているのだが、それは他の教科をカバーするほどには至らない。
その上自分は現国以外は本当にからっきしで、他の教科を伸ばせない。バカをこれほど恨んだことはなかった。
「総合2位がアイスでも奢ってやろうかァ？」
「おう。ハーゲンダッシュ3箱な」
「死ね」
しかし、と妬みの視線を惜しみ無く隣に注ぐ。隣を歩く気取った厨二男。こいつは校内でも有名な不良で授業は毎回といっていいほどサボっている。なのになぜ総合2位なのだ。
やはり勉強にも才能があるのだと俺は思う。この高杉という男は選ばれし勇者で、俺坂田銀時という男は選ばれずに馬車行きとなった元パーティーメンバーなのだ。
･･････俺は何の話を。
まあ要するに。
俺には勉強が向いていないので、勉強なんてやめちまおうってことだ。
「･･････つーかよォ高杉。テメーさっさと1位取れよな。いつまで2位ですかコノヤロー」
「仕方ねェだろ。相手は篠田だぜ？ 毎回満点取ってやがらァ」
俺は少しその篠田という奴に興味があった。何せこの高杉に1位の座を譲らないやつなのだ。同じクラスではないけれど、きっとものすごいガリ勉で堅物なんだろう。
頭には丸眼鏡をクイクイ上げながら七三分けの髪をぴしりと硬め、参考書片手にペラペラと難しい言葉を喋る男が連想されている。うえぇ、合わなそうだ。
哲学的なことしか言わなそうで、話が合う気がしない。話すだけで疲れそうなやつ。
「んっとに･･････気持ち悪ぃな、満点なんざ」
「てめェはもっとマシな点数取ってから言うんだなァ」
的確なところを突かれて返す言葉がない。
「うるせーよ」という語彙の欠片もない返事をすると、近くにあったコンビニへ足を踏み入れた。効きすぎていない冷房が心地良い。
「棒アイスか？」
「イチゴミルク味な」
「よくンな甘ったるい味を･･････」
高杉はぶつくさ言いながら自分のコーヒーと共にレジへ向かう。
外は少し夕日がにじんでいた。あとは電車に乗って、家へ帰るだけ。そう感じられた。
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