ずるい。 ページ1
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人を好きになるって、こんなに難しいんだね。
笑い合っていたあの日も、泣いていたあの日も。
あなたはいつも傍にいてくれた。
「もう泣くな。そんな涙、見たくない」
…だなんて。
こんなに泣いているのは、あなたのせいだというのに。
あなたはそうやって、いつも私を苦しめるんだよ。
想いを告げたあの日もそう。
あなたは肯定はしたけれど「好き」とは言ってくれなかった。
あの時の私はすごく馬鹿だったから。
これからのこと、なんて考えてもいなくて。
ただ。あなたを好きでいたの。
ぎこちなくなったのは、いつからだろう。
何かを抱えていたあなたを、支えてあげたかっただけなのに。
気持ちは空回りするばかりで、うまくいかなくて。
いつの間にか。
遠い存在になってた。
私ね。自分の事でいっぱいいっぱいだったんだよ。
あなたの声を聞く勇気も。
「私が好き?」って聞く勇気も。
到底。私にはあるはずもなくて。
私は、あなたと距離を置いた。
ほんの少しの希望を抱いて、
それを、疑いもせずに…。
でも。それが間違いだったんだね。
後悔ばかりだよ。
今更の事だけど。
あなたにはもう、大切な人がいて。
私の手は、空を掻いて。
消えゆくあなたを、見ていることしかできない。
諦めることができたなら。
…なんて、考えてみるけど。
それすらもできない自分が、泣いてこっちを見てくるんだ。
―あの時。あなたを、信じていれば。
何か変えられていたかもしれないのに。
そうとでも言っているような目つきで。
私だって。できるなら戻りたいよ。
戻って、あなたと向き合っていたい。
あなたはずるい。
とても、とてもずるい。
一番悪いのは私だって、ちゃんとわかっているけれど。
あなた以上の人なんて見つかるわけないじゃない。
あなた以上に好きになれる人なんて、いるわけないじゃない。
ずるいあなたのために流す涙も。
ずるい私のために送るメールも。
私には。とても遠くに思えるのに。
それでも。
あなたと、あなたの好きな人が。幸せになってほしいと思う私は、
ずるいのかな。
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作者名:おまめ。(しお) | 作成日時:2016年1月6日 21時