四十七話 ページ49
『無一郎さんも里に刀を?』
「いや…」
『何ですか』
「…からくり人形」
兄の話によれば、その里には戦闘訓練用のからくり人形があるらしく、それで鍛錬したいのだそうだ。
それにしてもからくり人形か。人間の相手をして鍛錬になるような人形などあるのだろうか。兄の言うことだし間違いはないのだろうが。
「相手が人形だったら首狙っても大丈夫だし」
『それはいいですね』
Aもやればと投げやりに言われたところで、互いの最後の木刀が壊れた。手にくっつく木くずを虚しそうに見つめ、服の裾で適当に拭うとおもむろに刀を手に取る兄。
「…これでやらない?」
『やりません』
もう終わり、と切り上げて、机に置いてあったプリンを手に取る。
『これ食べましょう』
「…なに、それ」
『プリンっていう甘味です。なめらかで美味しいんですよ』
「甘いの…」
すこし渋る様子を見せながらも珍しいもの見たさで寄ってくる。
『あれ?どうやって食べるんですかね。向こうには何か掬うものがあったんですけど』
「箸じゃだめなの?」
『柔らかいですから…箸しかないので箸で食べましょう』
箸で食べようとしてグズグズにしてしまうのは当然のことなのだった。無念。
もはや液体並みになってしまったプリンを、飲み物を飲むように流し込んだ。反対側から兄も飲んだが、びっくりしたり味わったり、甘すぎるという顔をしたりと表情がころころ変わって面白かった。
「お茶、お茶」
『どうぞ』
「はふ…甘い」
『また買ってきますね』
「もういい…」
渋いお茶をすすりながら少し文句を言っている。美味しいと思うのに。昔から、そんなに甘味は好きでは無かったんだったか…甘味など、めったに食べなかった気もするが…
「…里はまあそのうち行くから、言う」
『わかりました』
許可を取らなければならないし、日程も決まっていないようなので、また任務や柱の仕事、鍛錬を繰り返す日々が続くのだろう。悪くは無いのだが忙しい。
もう少し兄と話していたい。いつか、何かが、脳にかかった霞を晴らしてくれる…お館様はそう言っていたそうだ。
私がその何かになり得なくとも。所詮気休めかもしれないけれど。また、お兄ちゃんと呼べる日を願っているから。
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シャンプー(プロフ) - ゆーさんさん» 不快に思われたのなら申し訳ありません。注意書きを付け足しておこうと思います。 (2019年8月9日 12時) (レス) id: 2be3b2296e (このIDを非表示/違反報告)
ゆーさん(プロフ) - あくまで二次創作ですので、時透母についてはこういう人なのだというような感想を持たないようにお願いします。 (2019年8月8日 17時) (レス) id: 91a8b31b94 (このIDを非表示/違反報告)
シャンプー(プロフ) - にこちゃんさん» ありがとうございますー!!!私も時透くん推しです!!じわじわ書き進めておりますのでまったりお待ちくださいませ…!! (2019年7月22日 21時) (レス) id: 2be3b2296e (このIDを非表示/違反報告)
にこちゃん - 私、推しが時透君なので嬉しいです!更新待ってます!応援しています!! (2019年7月22日 21時) (レス) id: 5d74a38634 (このIDを非表示/違反報告)
シャンプー(プロフ) - ゆずさん» ありがとうございます!!!時透くんかっこかわいいですよね!頑張ります…!! (2019年7月22日 17時) (レス) id: 2be3b2296e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シャンプー | 作成日時:2019年7月22日 1時