撮影が終わっても。［K.M］ (ページ20)

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よーい、アクションページ20

出発して30分ほど経つだろうか。

「Aさ…おっと、リリさん。もうすぐ着きますよ」

「はい」

後部座席で揺られながら、
坂田さんの言葉にキュッと気を引き締める。

「まずはご挨拶に行きましょう。私も同行しますので」

坂田さんからの指示を聞くうち、
どんどん現実味を帯び始めていた。

ここまで来ると……

もちろん緊張はしているけれど、
火事場の馬鹿力とでも言うのだろうか、
それ以上に楽しみの方が大きかった。

「ご挨拶、まずは監督からです」

「はい……」

坂田さんに連れてきてもらったドアの前。
この向こうに監督がいる。

深い深呼吸の途中、
ここから本格的に歯車が回り始める、そんな感覚があった。

ノックして失礼します、と声をかけた。

「文月リリと申します。至らぬ所ばかりですが、よろしくお願いいたします」

そこに居たのは中性的かつ個性的なファッションに身を包んだ人。

「アナタがリリちゃんね……？期待してるわよ」

ニヤリ、と笑って監督は私に手を差し出す。

「はっ、はいっ！！よろしくお願いします」

女性的な仕草と口調とは相反して、
しっかりと握手をしたその手はシッカリしたものだった。